【過去問】大阪公立大学大学院経済学研究科 – 入試問題(院試)解答

 

2023年度実施

①政治経済学

 

カール・マルクスは『資本論』の第1巻第2篇第4章において,「労働力」を商品として分析しています.労働力とは,人間が持っている労働能力を指し,この労働力を売買することによって賃金を得ることができます.

労働力という商品は,使用価値と価値の2つの側面を持っています.使用価値とは,商品が持つ直接的な利用価値のことであり,労働力の場合は,その労働能力を使って仕事をすることによって,商品を生産することができるという利用価値を持ちます.一方で,価値とは,商品が持つ交換価値のことであり,商品を生産するために必要な労働時間の量によって決まります.つまり,労働力の価値は,その労働力を再生産するために必要な生活必需品や文化的な必要品を購入するために必要な労働時間の量によって決まり,このようにして,労働力の価値は賃金の形で表現されます.

しかし,マルクスは,賃金は労働者の生活を維持するために必要な最低限の生活必需品を購入するために十分な額であるが,労働者の労働力が生産する商品の価値以上の価値を生み出すことになるため,資本家が利益を上げることができると指摘しています.このように,労働者は賃金を受け取ることで自分の生活を維持することができるが,資本家は労働者の労働力を利用することで利益を上げることができます.

カール・マルクスが『資本論』第1巻第3篇第5章で述べているように,資本主義的生産過程は,労働過程と価値増殖過程の2つの側面を持っていると言えます.
労働過程は,商品を生産するために必要な実際の労働活動を指し,生産過程において労働者が生産手段を使って原材料や部品を加工し,最終的に商品を作り出すことになります.この過程においては,生産力が重要視され,生産手段の改良や生産プロセスの最適化によって生産力を向上させることができるのです.
一方,価値増殖過程は,商品を生産する過程において,労働者が提供する労働力から生じる価値の増加を指します.生産された商品の価値が,原材料や生産手段の使用によって消費される部分を差し引いた残りの部分よりも大きくなることで,価値の増加が生じるのです.この過程においては,労働者が生産する商品の価値を最大化するために,生産手段の使用方法や労働プロセスの最適化に注力されます.
このように,労働過程は商品の生産に直接関与する実際の労働活動を指し,価値増殖過程は商品の価値の増加を生じさせる生産プロセスを指します.両者は密接に関連しているが,生産力の向上が労働過程において生産量を増やし,価値増殖過程において生産された商品の価値を増やすことに寄与すると言えます.

カール・マルクスが『資本論』第1巻第3篇で述べている「必要労働」と「剰余労働」とは,労働者が生産過程において行う労働の2つの側面を表しています.具体的には,「必要労働」とは,労働者が自身の生活を維持するために必要な労働時間であり,つまり,労働者が自分自身と家族を養うために必要な食料,衣服,住居などを得るために必要な時間です.また,賃金はこの必要労働時間に応じて支払われています.
一方,「剰余労働」とは,労働者が必要な生活費を稼いだ後に行う余分な労働時間であり,つまり,労働者が自分自身や家族を養うために必要な生活費を稼いだ後に,さらに労働をする時間です.剰余労働によって生産された価値は,労働者には支払われず,代わりに資本家が利益として得ることができます.
このように,「必要労働」と「剰余労働」は,生産過程における労働の2つの側面であり,資本主義社会においては,剰余労働によって資本家が利益を得ることができます.マルクスは,このような剰余労働による労働者の搾取を批判し,社会主義社会においては剰余労働がなくなり,必要労働時間が短縮されることを提唱しています.

 

②ミクロ経済学

 

(a)
企業は次の利潤最大化問題を解きます.

\begin{align}
\text{max}_{p_1,p_2}\quad\pi=p_1Q_1+p_2Q_2-C
\end{align}
ここで,与えられている仮定より利潤は,
\begin{align}
\pi &= p_1(16-p_1)+p_2(8-p_2)-2(16-p_1+8-p_2)
&= p_1(16-p_1)+p_2(8-p_2)-2(24-p_1-p_2)
\end{align}

となります.利潤最大化の一階条件より,

\begin{align*}
\frac{\partial \pi}{\partial p_1}=16-2p_1+2=0\Leftrightarrow p_1=9
\end{align*}
\begin{align*}
\frac{\partial \pi}{\partial p_2}=8-2p_2+2=0\Leftrightarrow p_2=5
\end{align*}
この時の利潤は,
\begin{align*}
\pi = 9(16-9)+5(8-5)-2(24-9-5)=58
\end{align*}

となります.市場1において消費者余剰は,

\begin{align*}
\text{CS}_1=\int_0^9 (16-p_1) dp_1 -7*9 =\frac{81}{2}
\end{align*}
同様に,市場2において消費者余剰は,
\begin{align*}
\text{CS}_2 = \int_0^5 (8-p_2) dp_2 – 5*3 = \frac{25}{2}
\end{align*}

以上より,総余剰は$TS = \frac{81}{2}+\frac{25}{2}+58 = 111$となります.

(b)
この時,企業の利潤は,

\begin{align}
\pi &= p_1(16-p_1)+p_1(8-p_1)-2(16-p_1+8-p_1)
&= p_1(16-p_1)+p_1(8-p_1)-2(24-2p_1)
\end{align}

となります.利潤最大化の一階条件より,

\begin{align*}
\frac{\partial \pi}{\partial p_1}=16-2p_1+8-2p_1+4=0\Leftrightarrow p_1=7
\end{align*}
より,$p_2=7$となる.この時の利潤は,
\begin{align*}
\pi = 7(16-7)+7(8-7)-2(24-14)=50
\end{align*}

となります.(a)と同様に市場1の消費者余剰は,

\begin{align*}
\text{CS}_1=\int_0^7 (16-p_1) dp_1 -7*9 =\frac{49}{2}
\end{align*}
となります.市場2での消費者余剰は,
\begin{align*}
\text{CS}_2 = \int_0^7 (8-p_2) dp_2 – 7*1 = \frac{49}{2}
\end{align*}

となります.よって,総余剰は,$TS = \frac{49}{2}+\frac{49}{2}+50 = 99$となります.

 

 

 

(a)
市場の逆需要関数は$P=14-Q$となります.この時,企業1の利潤は,

\begin{align*}
\pi_1 = q_1(14-q_1-q_2)-2q_1
\end{align*}
となる.利潤最大化の一階条件より,
\begin{align*}
\frac{\partial \pi_1}{\partial q_1} = 14-2q_1-q_2-2=0\Leftrightarrow q_1 = 6-\frac{q_2}{2}
\end{align*}

を得ます.企業2についても企業1と対照的な状況なので,利潤最大化の一階条件より,$q_2=6-\frac{q_1}{2}$を得ます.企業2の生産量$q_2$を企業1の生産量に代入して,

\begin{align*}
q_1= 6-\frac{1}{2}(6-\frac{q_1}{2})\Leftrightarrow q_1 = \frac{24}{5}
\end{align*}
となります.企業2についても,$q_2=\frac{24}{5}$が成り立つので,企業1,2の利潤は$P=14-\frac{48}{5}=\frac{22}{5}$より,
\begin{align*}
\pi = \frac{22}{5}*\frac{24}{5}-2*\frac{24}{5}=\frac{288}{25}
\end{align*}

となる.

(b)
企業1の利潤は,企業2の最適反応$q_2=6-\frac{q_1}{2}$を所与として,

\begin{align*}
\pi_1 = q_1(14-q_1-6+\frac{q_1}{2})-2q_1
\end{align*}
となる.利潤最大化の一階条件より,
\begin{align*}
\frac{\partial \pi_1}{\partial q_1}=14-2q_1-6+q_1-2=0\Leftrightarrow q_1=6
\end{align*}

となります.よって企業2の生産量は$q_2=6-3=3$となる.逆需要関数より市場価格は$P=14-9=5$なので,企業1の利潤は,

\begin{align*}
\pi_1 = 5*6-2*6=18
\end{align*}
同様に,企業2の利潤は,
\begin{align*}
\pi_2 = 3*6-2*3 = 12
\end{align*}

となります.