【東北大学経済学部】2022年度(2021年実施)編入試験 – 解答、第Ⅱ問

2022年度(2021年実施)

 

第Ⅱ問

 

問1,
1年間など,一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で,国の経済活動状況を示します.付加価値とは,サービスや商品などを販売したときの価値から,原材料や流通費用などを差し引いた価値のことです.

 

問2,
ジュグラー循環(ジュグラーの波)約10年周期の景気循環で中期波動とも呼ばれます.企業の設備と耐久年数が約10年程度であることから,設備投資の時期によって景気のサイクルが大きな影響を受けるという説です.

問3,
外部性とは、ある経済主体の行動が、他の経済主体の経済環境に影響を与えてしまう効果のことです.代表的な例では,河川汚染や空気汚染,騒音被害といった公害問題があげられます.この状態を経済学では外部不経済が発生していると表現され,市場の失敗のひとつとみなされます. ピグー税の導入.

問4
1,まず,問題文を整理しましょう.効用関数はU(x,y)=xyで,x財の価格は10,y財の価格は20,消費者の所得は120です.これを式にして整理すると,
$Max U(x,y)=xy,s.t.10x+20y=120$になります.
この効用最大化問題を解くと,$MRS=\frac{y}{x}$となり,これは価格比と一致するので,$\frac{y}{x}=\frac{10}{20}$という関係式が導ける.
よって,$10x+10x=120$となり,xの需要量は6,yの需要量は3となる.

2,問題文を整理します.効用関数は変わらず,$U(x,y)=xy$で,x財の価格は10,y財の価格は$30(20+10)$,消費者の所得は120です.これを式にして整理すると,
$Max U(x,y)=xy,s.t.10x+30y=120$になります.
この効用最大化問題を解くと,$MRS=\frac{y}{x}$となり,これは価格比と一致するので,$\frac{y}{x}=\frac{10}{30}$という関係式が導ける.
よって,$10x+10x=120$となり,xの需要量は6,yの需要量は2となる.
税収は,yの需要量が3なので,$2*10$(税収)より,$T=20$となる.

3,問題文を整理します.効用関数は変わらず,$U(x,y)=xy$で,x財の価格は10,y財の価格は$30(20+10)$,消費者の所得は120で,ここから間接税であるTを差し引きます.これを式にして整理すると,
$Max U(x,y)=xy,s.t.10x+30y=1(20-T)$になります.
この効用最大化問題を解くと,$MRS=\frac{y}{x}$となり,これは価格比と一致するので,$\frac{y}{x}=\frac{10}{20}$という関係式が導ける.
よって,$10x+10x=(120-T)$となり,xの需要量は$\frac{(120-T)}{20}$,yの需要量は$\frac{(120-T)}{40}$となる.

4,所得税は,累進課税や個々の事情に合わせた控除を適用するなどの仕組みを取り入れやすく,納税者の所得や負担能力に応じた税金の徴収が可能である点がメリットです.一方で、お金を多く稼ぐほど税額が増える直接税の制度には,勤労意欲を損なうデメリットも考えられます.それに対して間接税は,所得の高低にかかわらず同じ税率を課すことで直接税と比べて不平等感が生じにくい点がメリットです.反面,所得が低い層ほど税負担率が高くなる傾向にあるというデメリットもあります.

問5

アロー型社会厚生関数は,社会的選択理論において個人の選好から社会の選好を導き出すための関数です.
アローの不可能性定理は,以下のように述べられます.
「3人以上の社会構成員からなる社会において,完全な個人の選好を尊重しつつ社会的な選好を求めるアロー型社会厚生関数を設計することは不可能です.」
つまり,社会的な選好を決定するアロー型の社会厚生関数には必ずしも望ましい特性が存在せず,ある条件を満たすことは不可能であるということであります.
この不可能性定理の経済学における意義と重要性は以下のような点が挙げられます.
個人の選好の集合から社会的な選好を一意に決定する方法は存在しないことが証明されています.つまり,全ての個人の意見や選好を反映しつつ社会的な選好を定めることは極めて困難であることが示されています.
アローの不可能性定理は,集合的選択理論や社会的厚生経済学における議論の基盤となっている.社会の意思決定や選好の形成において,個人の選好や意見をどのように扱うか,どのようなルールを設けるかといった問題に関して重要な指針となっています.