まず,$k_t = K_t/L_t$に注意して,与えられた資本蓄積式の両辺を$L_t$で割ります.
\begin{align*}
\frac{K_{t+1}}{L_t}\frac{K_t}{L_t} &= s\frac{Y_t}{L_t}-\frac{\delta K_t}{L_t} \\
\frac{K_{t+1}}{L_{t+1}}\frac{L_{t+1}}{L_t}-k_t &= s\frac{Y_t}{L_t}-\delta k_t\\
k_{t+1}(1+n)-k_t &= sk_t^{1-\alpha}-\delta k_t\\
k_{t+1} &= \frac{sk_t^{1-\alpha}+(1-\delta)k_t}{1+n}
\end{align*}
ここで,$\frac{Y_t}{L_t} = \frac{L_t^{\alpha}K_t^{1-\alpha}}{L_t} = (\frac{K_t}{L_t})^{1-\alpha} = k_t^{1-\alpha}$であること,$\frac{L_{t+1}}{L_t}=1+n$であることを利用しました.\\
次に,両辺から$k_t$を引くことで求める式が得られます.
\begin{align*}
k_{t+1}-k_t = \frac{sk_t^{1-\alpha}-(n+\delta)k_t}{1+n}
\end{align*}
(2)1人当り資本ストックの成長率を導出は,(1)でも止めた式の両辺を$k_t$で割ることにより可能です.
\begin{align*}
\frac{k_{t+1}-k_t}{k_t} &= \frac{1}{k_t}\frac{sk_t^{1-\alpha}-(n+\delta)k_t}{1+n}\\
&= \frac{s}{1+n}k_t^{-\alpha}-\frac{n+\delta}{1+n}
\end{align*}
(3)定常状態とは,時間tに依存せず,経済変数が一定の値を維持するような状態のことをいいます.
この場合,1人当り資本ストックに関して$k_{t+1}=k_t$となって,
1人当り資本ストックの水準が$k^*$から変化しないとします.
(1)で求めた式の左辺が0になり,$k_t=k^*$を代入すると,
\begin{align*}
0 &= s(k^*)^{1-\alpha} – (n+\delta)k^*\\
(k^*)^{-\alpha} &= \frac{n+\delta}{s}\\
k^* &= \left(\frac{s}{n+\delta}\right)^{1/\alpha}
\end{align*}
となります.
(4)成長率を$g_t^k = \frac{k_{t+1}-k_t}{k_t}$とおいて,$k_t$に関して偏微分すると,
\begin{align*}
\frac{\partial g_t^k}{\partial k_t} = -\alpha \frac{s}{1+n}k_t^{-\alpha-1}<0 \end{align*} より,
成長率は$k_t$に関して減少関数だとわかります.
よって,横軸に$k_t$,縦軸に$g_t^k$をとって図示すると,
となります.
$k_0 > k^*$となるとき,成長率は負になるため,
時間の経過とともに成長率は上昇,$k_t$は減少していき,最終的には定常状態$k^*$に落ち着きます.
(5)t期に移民を受け入れると,nが一時的に増加することになります.成長率をnに関して偏微分すると,
\begin{align*}
\frac{\partial g_t^k}{\partial n} = – \frac{s}{(1+n)^2}k_t^{-\alpha}-\frac{1}{(1+n)^2} <0
\end{align*}
より,nの増加で成長率は減少し,新たな定常状態に向かいます.
よって,1人当り資本ストックは時間を通じて減少していきます.これを図示すると以下の通りになります.
次に1人当り実質賃金率を考えます.
物価水準を$P=1$で基準化し,実質賃金率を$w$,
資本の実質レンタル価格を$r$と仮定します.
このとき,生産関数から企業は次の利潤最大化問題を解きます.
\begin{align*}
\text{max}_{L_t,K_t}\quad L_t^{\alpha}K_t^{1-\alpha}-w_tL_t-r_tK_t
\end{align*}
利潤最大化の一階条件より,以下の2つの方程式を得ます.
\begin{align*}
\alpha L_t^{\alpha-1}K_t^{1-\alpha} – w_t = 0 \Leftrightarrow \alpha k_t^{1-\alpha} = w_t \\
(1-\alpha) L_t^{\alpha}K_t^{-\alpha} – r_t = 0 \Leftrightarrow (1-\alpha)k_t^{-\alpha} = r_t
\end{align*}
ここで,定常状態では$k_t = k^* = \left(\frac{s}{n+\delta}\right)^{1/\alpha}$となるので,
これを代入すると,定常状態での実質賃金率$w^*$は,
\begin{equation*}
w^* = \alpha \frac{s}{n+\delta}
\end{equation*}
となります.これを,nについて偏微分すると,
\begin{equation*}
\frac{\partial w^*}{\partial n} = -\frac{\alpha s}{(n+\delta)^2} <0
\end{equation*}
となるため,1人あたり実質賃金率も,
1人当り資本ストックと同じように変化していくことがわかりました.