【横浜国立大学経済学部】2019年度(2018年実施)編入試験 – 解答、経済学Ⅱ問題3

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問題3

1. IS曲線を導出するのに必要な式は,財市場を考慮する必要があるので,
(1),(3)です.2. IS曲線を表す式は,式(1)に式(3)を代入したものになるので,
\begin{equation}
\label{IS}
Y = C(Y-T)+I(r)+G+NCO(r-r^*)……(1)
\end{equation}
になります.3. 全微分とは,それぞれの関数を引数で偏微分した後に,微小な変化分をかけて,それぞれを足したものになります.また,内生変数と外生変数に注意する必要すると,

IS曲線の全微分型は以下の通りになります.
\begin{align}
\label{IS_total_derivative}
dY &= \frac{\partial Y}{\partial C}dC+\frac{\partial Y}{\partial I}dI+\frac{\partial Y}{\partial NX}d\varepsilon……(2)\\
&= C’dC + I’dI + NX’d\varepsilon……(3)
\end{align}

4. 仮定より,$NCO'<0$である.これについて外国の実質利子率$r^*$が上昇すると, \begin{align} NCO’ > 0 ……(4)\\
\Rightarrow NX’>0 ……(5)
\end{align}
となる.よって,$dY > 0$となるため同じ国内利子率の元でも

国内総生産が上昇するためにIS曲線が右方にシフトする.

5. LM曲線を導出するのに必要な式は,貨幣市場を考慮する必要があるので,(2),(4)です.

6. LM曲線は貨幣市場の均衡を表す式なので,(2)より,
\begin{equation}
\frac{M}{P}=L(i,Y)……(6)
\end{equation}
である.

7. Mは外生変数であることに注意してLM曲線を全微分する.
\begin{align}
-\frac{M}{P^2}dP &= \frac{\partial L}{\partial i}di + \frac{\partial L}{\partial Y}dY……(7)\\
-\frac{M}{P^2}dP &= L_idi + L_YdY……(8)
\end{align}
ここで,(4)より,$di = dr + d\pi^e$であるが,

ここでは期待物価上昇率は外生変数なので,$di = dr$が成立する.

よって,$dr$で始まる全微分型は,
\begin{equation}
\label{LM-derivative}
L_idr = -\frac{M}{P^2}dP-L_YdY\Leftrightarrow dr = \frac{-\frac{M}{P^2}dP-L_YdY}{L_i}……(9)
\end{equation}
となる.

 

 

8. ここで,期待物価上昇率が上昇($d\pi^e>0$)すると,

$di = dr + d\pi^e$より,$dr=di-d\pi^e\Rightarrow dr <0$となる.

この時,式(9)よりLM曲線が同じ国内総生産に対して

より低い実質利子率で均衡することになる.よって,LM曲線が下方にシフトする.

 

 

9. 外国為替市場の均衡条件を表す式は,(3)です.

 

 

10. 総需要曲線を導出するのに必要な式は,

財市場と貨幣市場を考慮する必要があるので(1),(2),(3),(4)になります.

 

 

11. 総供給曲線を導出数のに必要な式は,

短期の場合を考えている(6)と,長期の総供給を考えている(7)の2つです.

 

12. $P^e=P$は,期待物価水準が現在の物価水準と等しいことを意味するので,

長期の経済であることを意味します.また,貨幣需要が所得に比例し,

国際的な資本移動が存在しないことを$L(i,Y)=\frac{1}{V}Y,NCO(r-r^*)=0$で示されています.

この場合,古典派の閉鎖経済であるので答えは(a)になります.

 

 

13. $\alpha$が無限大であるとき,短期の総供給曲線が水平になります.

また,$NCO(r-r^*)=0$より閉鎖経済になっています.

これは,閉鎖経済のIS-LMモデルを意味するので,答えは(d)になります.