【都市経済学】おすすめ本(入門,大学学部,大学院での教科書,参考書ランキング)

都市経済学の分野

都市経済学は、都市の発展と都市構造の形成過程を、経済学や統計学などの理論的な分析に基づいて研究する分野です。この学問は、都市に特有の空間的側面を重視して経済活動を分析します。通常の経済学では空間を考慮しないことが多いのに対し、都市経済学では、都市が空間的な広がりを持ち、財や人の移動に時間と費用がかかることを重要視します。例えば、電車の駅に近い住宅地の土地価格が、駅から遠い土地の価格より高いのは、駅までの移動時間と費用が少ないため、その地域への需要が大きいからです​​。

都市経済学は、都市での経済活動がどのように行われ、その結果どのような問題が生じ、それにどのような政策が有効かを研究します。世界中で多くの人々が都市に居住するようになり、生産や消費の場としての都市の重要性が高まっています。同時に、都市問題の新たな発生や問題の深刻化が社会の喫緊の課題となっており、都市経済学の役割も大きくなっています​​。

具体的な研究内容としては、都市をどのように考えるべきか、経済活動が狭い地域に集中するメカニズム、「集積の経済」の概念、都市内部の空間構造、居住者の選択、土地と住宅、都市交通の市場メカニズムなどがあります。これらの研究は、都市問題の理解や解決策の検討に重要な役割を果たしています。

 

都市経済学の書籍ランキング

 

1. 都市経済学の基礎(佐々木公明・文世一)
2. 都市・地域経済学への招待状
3. 入門都市経済学(浅田義久,山鹿久木)
4. 都市と地域の経済学(黒田 達朗,中村 良平,田渕 隆俊)
5. 都市経済学(高橋孝明)
6. 空間経済学(佐藤 泰裕 , 田渕 隆俊他)
7. 現代の都市経済学(小淵 洋一)
8. 空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析
9. 集積の経済学―都市、産業立地、グローバル化
10. 発展する地域 衰退する地域- 地域が自立するための経済学
11. 創造都市の経済学(佐々木 雅幸)
12. 年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

 

 

 

 

 

書籍概要

 

都市経済学の基礎(佐々木公明・文世一)

 

「都市経済学の基礎」は、佐々木公明と文世一によって著された経済学の教科書です。この本は、現代社会における「都市」の重要性を経済学的に捉え、明快に解説しています。特に、「空間」という観点を強調し、都市の実態的なメカニズムを豊富な図表を用いて解明し、実践的な都市政策や交通政策への洞察を提供します。

 

目次は以下の通りになります。

第1章: 都市はなぜ形成されるのか

都市の定義、形成・発展のプロセス、大規模生産の利益、集積の利益、大都市の形成について考察。

第2章: 都市はどこに形成されるのか

輸送費の最小化、都市の自己発展について。

第3章: 都市内の土地市場

第4章: 都市内土地利用と地代の決定

第5章: サブセンターの形成

第6章: 土地利用の規制

第7章: 都市規模と都市システム

第8章: 都市における交通問題

第9章: 都市における公共サービス

 

この教科書は、都市経済学の基礎から応用までを網羅し、理論的な側面と実際の事例をバランス良く取り入れています。都市計画、経済政策、交通問題など、都市経済学に関連する様々な領域の理解を深めるのに役立つ内容となっています​。

 

都市・地域経済学への招待状

『都市・地域経済学への招待状』は、経済学の視点から、日常生活に根ざした都市や地域の問題を解説する本です。この本は、佐藤泰裕によって書かれ、都市と地方の暮らし方、家賃と住居の広さなど、身近な選択肢を経済学の観点から考察します。目的は、読者がより良い選択をするための洞察を提供することにあります。

本書の目次を見ると、様々なトピックが扱われています。これには、日本の地域と都市の違い、地域の産業構造、地域間人口移動、集積の経済と都市化、住宅市場、都市内土地利用の分析、都市システムモデルと最適人口規模、地域間交易、企業立地、空間経済学、交通サービス、地方政府の役割などが含まれています​。

これらのトピックを通じて、都市と地域経済学の基本的な概念が紹介され、経済学の観点から日常生活における選択肢がどのように影響を受けるかを理解することができます。

入門都市経済学(浅田義久,山鹿久木)

浅田義久氏と山鹿久木氏による「入門都市経済学」は都市経済に関する包括的な教科書です。この本では、住宅や土地利用、都市及び地域の生活サイクルの問題を詳細に分析しています。また、交通や医療、教育、介護サービスなどの都市インフラの課題と解決策についても触れています。さらに都市交通に関する章では、交通渋滞や交通システムの財政的な課題について考察しています。本書の後半では、地方公共投資や都市財政に焦点を当て、地方交付税や国庫支出金が人口移動に与える経済的影響について分析しています​​

都市インフラのスケールの経済、集積の経済、医療サービス、保育・教育サービス、介護サービス、防災インフラなどを含む幅広いトピックをカバーしています。第8章「都市交通」では、都市部の交通混雑、交通機関の赤字問題、交通市場の規制や料金問題について詳述しています。第9章「地方公共投資と都市財政」では、日本の都市財政や都市制度、地方公共投資に焦点を当てています。これらの章では、都市経済の重要な側面を深く探求しています。

 

 

 

都市と地域の経済学 (黒田,中村,田渕)

『都市と地域の経済学 新版』は、黒田達朗、中村良平、田渕隆俊によって共著された書籍です。この本は、都市や地域の盛衰、住宅、産業立地、地域間格差、交通、環境、地方財政など、都市と地域の問題を幅広く取り上げ、理論分析と実証分析を駆使して解明しています。バブル経済の崩壊や平成の大合併を経て、最新のデータと発展している空間経済学の理論を取り入れて全面的に改訂されました。

目次は以下のように構成されています:

   都市と都市化の概念

   都市集積の理論

   都市規模と都市システム

   住宅の立地

   都市の空間構造

   産業の立地

   地価と土地政策

   住宅市場の理論と政策

   地域経済の基本構造

   地域経済の成長理論

   地域間格差と人口移動

   地域間交易と空間経済学

   都市と地域の交通

   都市の環境問題

   公共部門と都市・地域政策

この本は、都市や地域の経済問題に関心がある学生や自治体職員などに最適な資料です

 

 

 

 

都市経済学(高橋孝明)

 

有斐閣の『都市経済学』(有斐閣ブックス)は、都市経済学の分野で重要なテキストです。この書籍は、東京大学の教授であり、都市経済学、地域経済学、経済地理学の専門家である高橋孝明によって書かれました。2012年10月に発売され、344ページからなるこの本は、都市の経済活動や集積のメカニズムを明らかにしています。

本書は、消費者・生産者行動の理論など、ミクロ経済学の基礎から始まり、都市の空間構造や都市問題、さらには土地・住宅・交通について詳しく学ぶ内容となっています。これにより、都市経済学の分野における標準的な知識と理解を提供しています。

本書の目次は以下の通りです:

   序章: 都市経済学とは

   第1部: 都市とは何か

       第1章: 都市と都市システム

       第2章: 生産者行動の理論

       第3章: 都市が存在する理由

   第2部: 都市内構造の理論

       第4章: 消費者行動の理論

       第5章: 都市内土地利用の理論1

       第6章: 都市内土地利用の理論2

   第3部: 土地・住宅・交通──市場メカニズムと経済政策

       第7章: 政策的介入が必要な理由

       第8章: 土地市場

       第9章: 土地政策

       第10章: 住宅市場

       第11章: 住宅政策

       第12章: 都市交通

   数学補論

空間経済学(佐藤 泰裕 , 田渕 隆俊他)

経済活動が空間的にどのように集中するのか、そして都市がどのように形成されるのかという重要な問いに対して、空間経済学の観点からの答えを提供します。理論の基礎から最先端の研究に至るまでをカバーしており、産業の集積や都市化のメカニズムを解明することを目的としています​​​。

本書の内容は、新貿易理論、新経済地理学、空間経済学と単一中心都市モデル、空間経済学と動学的分析、空間経済学と租税競争、空間競争と中心地理論など、多岐にわたります。これらの章では、経済活動が特定の地域に集中する理由や、都市がどのように成長し変化していくのかなどについて詳細に説明されています​​。

経済学の新しいフロンティアとして位置づけられる空間経済学は、経済活動の地理的な側面を重視し、都市や地域経済の理解を深めるための重要なアプローチを提供します。この書籍は、経済学を学ぶ学生や研究者、また経済活動の地理的側面に興味を持つ一般読者にとっても有益な内容となっています。

 

現代の都市経済学(小淵 洋一)

 

小淵洋一による「現代の都市経済学」は、世界中の多くの都市で共通して見られる現代の都市問題を、都市経済学の観点から分析し、その解決策を探求する内容になっています。本書では、住宅、土地、環境、交通、財政問題など、さまざまな都市問題に焦点を当てています。

第1章: 現代の都市問題と都市経済学について
第2章: 都市の成長・発展と都市成長モデル
第3章: 都市の住宅問題と住宅政策
第4章: 都市の土地問題と土地政策
第5章: 都市の交通問題と交通政策
第6章: 都市公害・都市環境問題と環境政策
第7章: 都市の財政問題と都市政策について考察

 

この書籍は、都市問題に関心のある方や、都市経済学を学ぶ学生、専門家にとって貴重なリソースとなることでしょう

 

 

空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析

『空間経済学―都市・地域・国際貿易の新しい分析』は、藤田昌久、ポール・クルーグマン、アンソニー・J・ベナブルズの共著です。この本は、1990年以降に地域、都市、国際貿易、経済発展、産業立地など経済の空間的側面を扱う研究が急速に進展したことを背景に、世界的な権威によってまとめられた画期的なテキストです。

目次は以下の通りになっています。

第1章 イントロダクション

第1編 背景となる関連研究

第2章 先駆的研究1:都市経済学

第3章 先駆的研究2:地域科学

第2編 労働移動と地域の発展

第4章 独占的競争のディクシット=スティグリッツのモデルとその空間経済への拡張

第5章 核と周辺地域

第6章 多数地域および連続空間

第7章 農業品の輸送費用

第3編 都市システム

第8章 都市システムの空間モデル:問題点発見のための序論

第9章 単一中心経済

第10章 新都市の形成

第11章 階層的都市システムの発展

第12章 都市規模に関する実証分析

第13章 港湾、輸送ハブと都市の立地

第4編 国際貿易

第14章 国際的特化

第15章 経済発展と産業の拡散

第16章 産業集積

第17章 継ぎ目のない世界

第18章 国際貿易と国内地理

第19章 今後の課題

この分野における理論的な基盤や研究成果を集約し、空間経済学の新しい地平を開く内容になっています。

 

 

集積の経済学―都市、産業立地、グローバル化

 

藤田昌久とジャック・F・ティスによる「集積の経済学―都市、産業立地、グローバル化」は、都市・地域経済学と空間経済学の最新研究を踏まえた作品です。この書籍は、交通費と通信費の大幅な低下によって顕在化された新しい経済活動の動向、特に高い生産性を持つ現代の大都市の出現に影響を与えた力に焦点を当てています。経済集積の出現とその経済効果を統一的なミクロ経済モデルを用いて分析し、明快に説明しています​​​​

本書は以下の11章からなり、主に現代の大都市の出現に影響を与えた力について言及されています。

第1章 集積と経済理論

 

第1部 空間経済学の基礎

第2章 空間経済における価格メカニズムの崩壊

第3章 チューネン・モデルと地代形成

第4章 収穫逓増と輸送費:空間経済における基本的なトレードオフ

第5章 都市と公共部門

 

第2部 大都市圏の構造

第6章 コミュニケーションの外部性の下での都市空間構造

第7章 不完全競争下での都心の形成

 

第3部 要素移動と産業立地

第8章 独占的競争下の産業集積

第9章 市場規模と産業クラスター

 

第4部 都市システム、地域成長、および企業の多国籍化

第10章 フォン・チューネンへの回帰:空間経済における都市の出現

第11章 グローバル化、成長、およびサプライチェーンのフラグメンテーション

 

発展する地域 衰退する地域: 地域が自立するための経済学

 

『発展する地域 衰退する地域 ─地域が自立するための経済学』は、ジェイン・ジェイコブズによる地域経済論の名著です。ジェイコブズはアメリカでの大規模再開発による街の変容を観察し、都市や地域が生み出すダイナミズムに焦点を当てています。

本書では、地域が自立し経済的に発展するためには、それぞれの地域が持つ資源を活用し、住民の創意を生かした活動が必要であると論じています。

目次は以下の章立てで構成されています:

   愚者の楽園

   現実にたちもどって

   都市地域

   供給地域

   労働者に見すてられる地域

   技術と住民排除

   移植工場地域

   都市のない地域に向けられた資本

   取り残された地域

   なぜ後進都市は互いを必要とし合うのか

   都市への誤ったフィードバック衰退の取引

   苦境

   漂流

 

創造都市の経済学(佐々木 雅幸)

『都市・地域経済学への招待状〔新版〕』は、佐藤泰裕教授によって書かれた経済学の入門書です。この本は、都市と地域の経済問題をわかりやすく解説し、新型コロナウイルスの影響やリモートワークのような現代的なテーマにも対応しています。

目次は以下のように構成されています:

   日本の地域と都市:日本はどこでも同じ?

   地域の産業構造:どこで何が作られている?

   地域間人口移動:なぜ、どこに引っ越す?

   集積の経済と都市化:都市の魅力とは?

   住宅市場:住まいの値段はどう決まる?

   都市内土地利用の分析:通勤とマイホームのバランスとは?

   都市システムモデルと最適人口規模:住めば都か蟻地獄か?

   地域間交易:手分けすることの利点は?

   企業立地:どこで開業するべき?

   空間経済学:距離はなぜ重要?

   交通サービス:混雑何がはた迷惑?

   地方政府の役割:困ったときは政府頼み?

この本は、都市と地方での生活、家賃と住居の広さ、都市の魅力や住宅市場、企業の立地選択など、実生活に密接に関連する経済的問題について、理論的な側面からアプローチしています。統計データを最新のものに更新し、日本の都市と地域経済に関する様々な側面を網羅しています

 

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

エンリコ・モレッティの著書「年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学」は都市経済学における興味深いトピックをカバーしています。この本は以下の7章から構成されています:

1. 「都市型製造業」の限界と先進国の製造業の復活可能性について。
2. イノベーション産業の「乗数効果」と雇用の性質に関する考察。
3. 給料が教育よりも居住地で決まること、イノベーション産業の都市部集中に焦点。
4. 「引き寄せ」の力と頭脳流出が朗報である理由について。
5. 移住と生活コスト、教育の低い層の地元定着傾向と不動産価格との関係。
6. 「貧困の罠」と地域再生の条件、バイオテクノロジー産業とハリウッドの共通点。
7. 「人的資本の世紀」、教育における格差の核心、イノベーションと移民の役割。

この本は、居住地が収入に与える影響と都市経済学における革新と雇用の役割について包括的に分析しています。