社会科学について
社会科学は、人間の行動や社会の構造といった複雑なテーマを探求する学問分野です。この領域は、心理学、社会学、政治学、経済学など、多岐にわたる分野を含みます。これらの分野は、私たちの日常生活や社会全体の運営に深い洞察を提供し、多くの重要な疑問に答えを求めます。
本稿では、社会科学に興味を持つ読者、学生にこの分野に関する書籍を紹介します。これらの書籍は、基礎的な理論から最新の研究まで、社会科学の世界を深く理解するのに役立つものばかりです。読者はこれらの書籍を通じて、人間の行動の謎を解き明かし、社会の動きをよりよく理解するための洞察を得ることができるでしょう。
社会科学書籍ランキング
1 | 世の中を知る、考える、変えていく: 高校生からの社会科学講義 |
2 | 高校生からわかる社会科学の基礎知識 |
3 | 社会科学の考え方―認識論、リサーチ・デザイン、手法― |
4 | 社会科学のリサーチ・デザイン: 定性的研究における科学的推論 |
5 | 社会科学のためのデータ分析入門(上, 下) |
6 | 社会科学のための統計学入門 実例からていねいに学ぶ |
7 | 社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ |
8 | 社会科学の哲学入門 |
9 | 論理の方法―社会科学のためのモデル |
10 | 社会科学の方法: 実在論的アプローチ |
11 | 奇跡の社会科学 現代の問題を解決しうる名著の知恵 |
12 | 社会的葛藤の解決 (社会的葛藤の解決と社会科学における場の理論) |
13 | 社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」 |
14 | 社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス |
15 | 「科学技術と社会」を再考する |
16 | 戦後「社会科学」の思想 |
17 | 現代産業社会の展開と科学・技術・政策 |
18 | ヴェーバーとともに40年―社会科学の古典を学ぶ |
世の中を知る、考える、変えていく: 高校生からの社会科学講義
世の中を知る、考える、変えていく: 高校生からの社会科学講義』は、経済学、政治学、法学、社会学の4つの社会科学分野に焦点を当てた書籍です。この本は特に、文系学部への進学を考える高校生や、現代社会の課題について理解を深めたいと考える読者を対象にしています。主要なテーマとして、「環境」「貧困」「テクノロジー」「ジェンダー」の4つが取り上げられ、各学問分野の特色、着眼点、アプローチの方法、問題意識について解説しています。
本書は以下のような構成となっています。
- イントロダクション:
- 経済学: 効率性とインセンティブの観点から世の中を考える。
- 政治学: 人を動かす力から世の中を考える。
- 法学: ルールの観点から世の中を考える。
- 社会学: 現実を把握することから世の中を考える。
- 環境:
- 環境問題と法はどのようにかかわっているか?
- 排出権取引で温暖化は食い止められるのか?
- 国際環境協調をどのように促すか?
- 環境をめぐる人々の取り組みは世の中をいかに変えるのか?
- 貧困:
- 現代社会における貧困とは?
- 貧困問題に法学はどのように取り組むか?
- 貧困を解決するための政策の効果と副作用とは?
- 貧困とどう向き合い、考えていくか?
- テクノロジー:
- なぜ人々は民主主義よりもAIを選ぶのか?
- 「データの私」と「生身の私」、どちらが私?どちらも私?
- 人工知能(AI)とデータの時代の法律学とは?
- AIによって未来の仕事はどうなるか?
- ジェンダー:
- なぜ女性は男性より賃金が低いのか?
- 女性議員が増えれば政治は変わるのか?
- 社会のあり方は性別にどう関係するのか?
- 性別による区別・格差に法学はどう向き合うか?
本書は、社会科学の各分野における基本的な概念や理論を理解し、現代社会が直面する重要な問題について深く考える手助けをすることを目的としています。高校生だけでなく、社会科学に興味を持つすべての人にとって有用な内容となっています。
高校生からわかる社会科学の基礎知識
『高校生からわかる社会科学の基礎知識』は、現代社会を理解するために必要な社会科学の基礎知識を総合的に解説した本です。この本では、法律、政治、経済などがそれぞれ独立して存在するのではなく、有機的なつながりを持って社会が成り立っていることを説明しています。具体的には、近代の法・経済・政治の成り立ちと仕組みを、歴史的観点から総合的に解説しています。この本を通じて、社会科学の論点を整理しながら、現代社会を考察する基礎知識を身につけることができます。高校生から大学生、さらには社会人まで幅広く役立つ社会科学の入門書とされています。
また、本書は政治、経済、法律などの分野がどのように繋がっているかを分かりやすく解説し、高校生レベルで社会科がつながるように設計されています。具体的な内容比率としては、政経が40%、世界史が35%、倫理が10%、地理が10%、日本史が5%となっています。このような構成により、社会科の知識が連携して理解できるようになっています。大学受験の社会科学系小論文や大学の教養課程にも大いに役立つとされており、資本主義社会を生きる上での基礎知識としても推奨されています。
この本の特徴として、筆者が政治的に中道の立場を取っているため内容が偏っていない点、特殊な5部構成で理解を促進する点、社会を有機的に理解できる点、社会に対する問題意識や使命感を喚起する点などが挙げられます。
社会科学の考え方―認識論、リサーチ・デザイン、手法―
『社会科学の考え方―認識論、リサーチ・デザイン、手法』は、社会科学の研究方法に関する包括的な指南書です。この書籍は、単に手法やリサーチ・デザインの技術的側面を解説するだけでなく、それらの背景にある考え方やロジックに焦点を当て、方法論を体系的に整理しています。特に、多様な認識論的立場に基づいて方法論の全体像を描いている点が特徴です。認識論とは、「我々は世の中をどのように認識することができるのか」という問いに関する考え方を指します。
著者である野村康氏は、この書籍を通じて、社会科学の認識論、リサーチ・デザイン、そして具体的な手法について詳細に説明しています。以下は、書籍の主要な構成です。
第I部 社会科学の認識論
- 存在論の2つの立場(基礎づけ主義と反基礎づけ主義)
- 認識論のパラダイム(実証主義、批判的実在論、解釈主義)
第II部 社会科学のリサーチ・デザイン
- 事例研究:定義、特性、単一事例及び複数事例の選び方、構成要素
- 実験:定義、種類、妥当性と問題点、方法論的位置づけ
- 横断的・縦断的研究:定義、特性、方法論的位置づけ、標本抽出
第III部 社会科学の手法
- インタビュー:類型、個別インタビュー、集団インタビュー
- エスノグラフィー/参与観察:定義、手順、注意点
- 調査票調査:概要、進め方、データの分析
この書籍は、社会科学を学ぶ上で、認識論から始めて、リサーチ・デザインと具体的な研究手法まで、メソドロジー(研究方法論)の全体像を明確に整理し、提供しています。また、研究者が国際的に通用する研究を行うために必要な、複数の認識論的立場の違いを踏まえた整理がなされていることが、この書籍の最大の特長と言えるでしょう。
社会科学のリサーチ・デザイン: 定性的研究における科学的推論
『社会科学のリサーチ・デザイン: 定性的研究における科学的推論』は、社会科学の研究手法に関する専門的な入門書です。この本は、数理統計モデルと質的な記述を統合することに焦点を当て、社会科学におけるより良い研究を目指す思考法を提供します。具体的には、観察を行い、因果関係を確かめ、妥当な結論を適切に導くための方法を提示しています。
本書は以下の章で構成されています。
- 社会科学の「科学性」
- 研究設計の主要な構成要素、本書のテーマなどについて説明。
- 記述的推論
- 一般的知識と個別的事実、データ収集の科学的目的、定性的研究の数式モデルなどについて考察。
- 因果関係と因果的推論
- 因果関係の定義、因果的効果を推定するための仮定、因果的推論の判定基準などについて説明。
- 何を観察するか
- 不定な研究設計、無作為選択の限界、観察の意識的な選択などに関する議論。
- 何を避けるべきか
- 測定誤差、関係のある変数の排除、関係のない変数を含めることによる有効性の低下などについての指摘。
- 観察の数を増やす
- 因果的推論のための単一観察設計、どれくらいの数の観察が十分か、少数の観察から多くの観察をつくる方法などについての解説。
また、定量的研究と定性的研究の両方を統合する思考法について明快に解説しており、研究計画段階で理論とデータをつなぐ観察可能な含意を列挙することの重要性を強調しています。また、社会科学研究においては、少なくとも研究者の主観による科学的な推論作業が行われることも指摘されています。
社会科学のためのデータ分析入門(上, 下)
『社会科学のためのデータ分析入門(上)』は、計量社会科学におけるデータ分析の基礎を学ぶためのテキストです。この書籍では、研究の背景に関する知識、プログラミング、統計手法という、計量社会科学に不可欠な3つの要素を初歩から丁寧に解説しています。実際の論文で使われたデータを統計ソフトRを使って分析し、データ分析と結果の解釈、得られた知見の効果的な公表方法を実践的に学ぶことができます。
上巻では主に以下の内容が取り上げられています:
- イントロダクション: 本書の概観、使い方、Rの基礎(算術演算、オブジェクト、ベクトル、関数、データファイルなど)について説明します。
- 因果関係: 労働市場における人種差別、ランダム化比較試験、観察研究、最低賃金と失業率、交絡バイアスなどに関して解説し、データを部分集合化する方法や、1変数の記述統計量について学びます。
- 測定: 戦時における民間人の被害の測定、欠損データの扱い、1変量の分布のビジュアル化(棒グラフ、ヒストグラム、箱ひげ図など)、標本調査、政治的分極化の測定などに焦点を当てています。
- 予測: 選挙結果の予測、線形回帰、回帰分析と因果関係、不均一トリートメント効果、回帰分断デザインなどについて詳しく説明し、Rを使った具体的な分析方法を学びます。
『社会科学のためのデータ分析入門(下)』は、今井耕介氏が著した書籍で、社会科学分野におけるデータ分析に関する入門書です。この書籍は、特に計量社会科学に関心がある読者を対象にしています。主に、研究の背景に関する知識、プログラミング、統計手法について初歩から詳しく解説しています。本書では、実際の論文で使用されたデータを統計ソフトRを用いて分析し、データ分析の結果の解釈や、得られた知見の効果的な公表の方法について実践的に学ぶことができます。
下巻の目次は以下の通りです:
- 発見
- テキストデータ
- ネットワークデータ
- 空間データ
- まとめ
- 練習問題
- 確率
- 確率
- 条件付き確率
- 確率変数と確率分布
- 大標本理論
- まとめ
- 練習問題
- 不確実性
- 推定
- 仮説検定
- 不確実性を伴う線形回帰モデル
- まとめ
- 練習問題
- 次の一歩
著者の今井耕介氏は、プリンストン大学政治学部および統計・機械学習センターの教授で、東京大学教養学部を卒業後、ハーバード大学で修士号(統計学)および博士号(政治学)を取得しています。専門は応用統計学、計量社会科学、政治学方法論であり、発表論文は因果推論、世論調査、ベイズ統計など多岐にわたります。
この書籍は、社会科学のデータ分析を学びたいと考えている学生や研究者にとって、非常に有用なリソースです。特に、Rプログラミングに関する実践的な知識を身につけたいと考えている人にとって役立つでしょう。
社会科学のための統計学入門 実例からていねいに学ぶ
『社会科学のための統計学入門 実例からていねいに学ぶ』は、毛塚和宏氏によって著された書籍で、社会科学分野における統計学の基礎を解説しています。この本は、社会調査に携わる人々が統計学の基本を理解し、実際のデータを通して社会の様々な側面を明らかにすることを目的としています。社会の下流化、夫婦間の家事分担、世代間の格差など、現実世界の具体的な事例を取り上げています。
本書は以下のパートと章で構成されています、
Part I: コア
- データを集める: 社会調査
- データをまとめる: 記述統計
- 関連を捉える: クロス表と相関係数
- 関連を疑う: 疑似相関と変数の統制
- データから推測する: 推定
- データから確かめる: 検定
Part II: 理論
- コイントスで社会を見る: 離散変数と二項分布
- 集まったデータを表現する: 連続変数と正規分布
- 推定が満たすべき条件: 不偏性とバイアス
Part III: 手法
- 社会の下流化は起こっているか: 平均・比率の差の検定
- 継承される格差を検討する: 移動表とカイ二乗検定
- 世界の男性の家事事情: 分散分析
- 年収と年齢の関係: t分布と相関係数の検定
- ワイン評論家を出し抜く方法: 回帰分析
Part IV: 終わりに
- 統計学の応用とこれから: ビッグデータとベイズ統計学
この本は、統計学の基本的な理論から応用に至るまで、幅広いトピックをカバーしており、特に社会調査に関わる人々にとって有用なリソースとなっています。
社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ
『社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ』は、佐藤俊樹による社会科学における因果分析の方法論に関する著書です。本書は、社会科学の創始者の一人であるマックス・ウェーバーの因果分析の方法論が、現代の社会科学の展開や論争、統計的因果推論などにどのように影響しているかを探求しています。また、文科系/理科系の分類を超える学問の姿を明らかにし、従来のウェーバー像とは異なる新しい学問の姿を提示しています。
本書の主な内容は以下の通りです。
- 社会科学とは何か: 社会科学の目的や、人文学と自然科学の間の関係性について議論されています。
- 百年の螺旋: リッカートの文化科学、機能主義と因果の推論、システムと文化科学と二項コードなど、様々な理論や考え方を紹介しています。
- 適合的因果の方法: 歴史の一回性と因果、適合的因果と反実仮想、法則論的/存在論的な考察について論じています。
- 歴史と比較: 日常会話の可能世界、歴史学者の思考実験、自然の科学と社会の科学、比較社会学への展開について述べています。
- 社会の観察と因果分析: 法則論的知識と因果推論、社会科学と反事実的因果、因果効果と比較研究など、社会科学における因果分析の重要性を強調しています。
『社会科学と因果分析: ウェーバーの方法論から知の現在へ』は、社会科学における因果分析の方法論を深く理解するための重要な資料であり、学術的な議論や研究に大きく貢献している作品です。
社会科学の哲学入門
『社会科学の哲学入門』は、社会科学に関する様々な問題を哲学的に検討する科学哲学の一分野に焦点を当てた書籍です。社会科学の本質、方法論、目的、理論、そして自然科学との関係性など、多岐にわたるトピックを深く掘り下げています。以下は書籍の主要な内容についての概要です。
- 社会科学の哲学の理解: この分野がどのようなものであり、どのような議論が行われているかについて紹介しています。社会科学の哲学を学ぶことは、社会哲学と同一視されることがありますが、筆者はこの二つが異なる分野であると明確に区別しています。
- 序章: 社会科学の哲学を学ぶとはどういうことかについての考察。これには、社会科学の哲学とは何か、研究対象となる社会科学とは何か、社会科学の哲学を論じる理由、社会科学とその哲学の関係、本書の必要性、本書の構成に関する詳細な説明が含まれています。
- 本書の内容: 社会現象の捉え方、社会科学の普遍性、研究者の価値観の取り除き方、社会科学と自然科学の関係など、社会科学に関する様々な問題を哲学的に問う内容を掲載しています。これは、初学者のためのガイドブックとして機能します。
- 各章の内容: 本書は以下の章で構成されています。
- 社会科学は社会現象をどのように捉えるか
- 社会科学の方法と目的はどのようなものか
- 社会科学の理論は何のためにあるか
- 社会科学はものの見方の一つに過ぎないのか
- 社会科学において認識と価値はどのような関係にあるか
- 社会科学と自然科学の関係はどのようなものか
- 終章では、本書がどこにたどり着いたのかについてのまとめと展望が示されています。
- 感想と評価: 読者からは、社会科学の哲学という学問自体が新しく、哲学と社会科学の双方から物事を捉える面白い分野だという評価がされています。また、本書が日本において本格的な入門書としては初めてであるという点も評価されています。
こちらは、社会科学に興味を持つ初学者から専門家まで、幅広い読者に対して社会科学の哲学に関する深い洞察を提供することを目指しています。
論理の方法―社会科学のためのモデル
『論理の方法―社会科学のためのモデル』は、小室直樹氏によって書かれた社会科学分野におけるモデル化の重要性を説く書籍です。この書籍では、具体的には経済学、社会学、歴史学などの分野で用いられるモデルに焦点を当て、それらのモデルがどのように現実の事象を抽象化し、本質的なものだけを抜き出して理解や研究に活かされるかを解説しています。
小室氏は、社会科学分野でのモデル作成における抽象化と捨象の重要性を強調しています。彼は、ケインズ経済学モデル、マックス・ウェーバーによる宗教と資本主義の精神モデル、丸山真男による日本政治モデル、平泉澄による日本歴史モデルなど、複数の重要な社会科学モデルを紹介し、それらがどのように社会の理解を深めるために役立つかを説明しています。
また、小室氏は、モデル化が単なる現実の模写ではなく、現実を基にしたフィクションであり、現実の一部を抽象化し、その他の多くを無視することで理論を構築する作業であることを強調しています。彼は、ソビエトの崩壊や社会主義の論理を解析することから始め、キリスト教の論理や日本の習慣がどのように社会に影響を与えるかを考察し、そうした論理の追求を通してモデルに至る道筋を解きほぐしています。
この本は、社会科学の諸分野においてモデルがいかに重要であるか、そしてそれらがどのように構築され活用されるかを理解するための重要なリソースです。小室氏の深い洞察と論理的な説明は、社会科学における理論の構築と理解を深めるために役立ちます。
『論理の方法―社会科学のためのモデル』は、小室直樹氏によって書かれた社会科学分野におけるモデル化の重要性を説く書籍です。この書籍では、具体的には経済学、社会学、歴史学などの分野で用いられるモデルに焦点を当て、それらのモデルがどのように現実の事象を抽象化し、本質的なものだけを抜き出して理解や研究に活かされるかを解説しています。
小室氏は、社会科学分野でのモデル作成における抽象化と捨象の重要性を強調しています。彼は、ケインズ経済学モデル、マックス・ウェーバーによる宗教と資本主義の精神モデル、丸山真男による日本政治モデル、平泉澄による日本歴史モデルなど、複数の重要な社会科学モデルを紹介し、それらがどのように社会の理解を深めるために役立つかを説明しています。
また、小室氏は、モデル化が単なる現実の模写ではなく、現実を基にしたフィクションであり、現実の一部を抽象化し、その他の多くを無視することで理論を構築する作業であることを強調しています。彼は、ソビエトの崩壊や社会主義の論理を解析することから始め、キリスト教の論理や日本の習慣がどのように社会に影響を与えるかを考察し、そうした論理の追求を通してモデルに至る道筋を解きほぐしています。
この本は、社会科学の諸分野においてモデルがいかに重要であるか、そしてそれらがどのように構築され活用されるかを理解するための重要なリソースです。小室氏の深い洞察と論理的な説明は、社会科学における理論の構築と理解を深めるために役立ちます。
社会科学の方法: 実在論的アプローチ
『社会科学の方法: 実在論的アプローチ』は、アンドリュー・セイヤーによる批判的実在論の視点から社会研究のアプローチ方法を検討した作品です。この本では、研究対象と研究目的から最適な研究方法を導き出すための方法論が詳述されています。アンドリュー・セイヤーは、イギリスのランカスター大学社会学部の教授で、社会理論および政治経済学を専門としています。彼の研究は、社会の実質的な問題、特に政治経済と不平等の問題の研究と常に結びついています。
本書の目次を見ると、以下のような内容が含まれています:
- 文脈の中の知識
- 理論、観察、実践的適合性
- 理論と方法Ⅰ(抽象、構造、原因)
- 理論と方法Ⅱ(システムのタイプとその含意)
- 科学哲学におけるいくつかの影響力ある不幸な出来事
- 社会科学における量的方法
- 立証と反証
- ポパーの「反証主義」
- 説明に関わる諸問題と社会科学の目的
- 補論 実在論と叙述および社会科学の方法の未来についての覚え書き
これらの章は、社会科学における実在論的アプローチに関する深い洞察と理解を提供します。欧米で30年にわたり版を重ね続ける名著として、批判的実在論の視点から社会研究にどのようにアプローチすべきかを探求しています。
奇跡の社会科学 現代の問題を解決しうる名著の知恵
『奇跡の社会科学 現代の問題を解決しうる名著の知恵』は、社会科学の古典と現代社会の問題点を結びつけ、それらの古典がいかに現代にも有効であるかを解説する書籍です。著者は、経済学、社会学、政治学などの分野における古典的な著作を取り上げ、それらの知見が現代の諸問題、例えば組織改革の失敗、自殺の問題、戦争の原因などにどのように光を当てているかを明らかにしています。
本書では、マックス・ウェーバーによる組織改革の失敗についての分析、エドマンド・バークの漸変主義、アクレシス・ド・トクヴィルによる民主主義の危険性、カール・ポランニーの新自由主義批判、エミール・デュルケームの自殺に関する研究、E・H・カーによる戦争の起因分析、ニコロ・マキアヴェッリの政治理論、そしてジョン・メイナード・ケインズの経済理論など、多岐にわたる社会科学の古典が取り上げられています。
特に新自由主義に関する批判は、1980年代以降のアメリカ、イギリス、そして日本における経済政策の問題点を浮き彫りにしています。新自由主義がもたらす全体主義的傾向や、市場原理を絶対視することによる社会的な弊害が、古典経済学者たちの先見性に裏打ちされて説明されています。
『奇跡の社会科学』は、社会科学の古典が今日的な問題解決にどのように貢献できるかを、具体的な事例と理論を交えて論じており、社会科学に関心がある読者にとっては、非常に興味深い内容となっています。
社会的葛藤の解決 (社会的葛藤の解決と社会科学における場の理論)
『社会的葛藤の解決』は、心理学者クルト・レヴィンによる著作で、社会の実際問題をどのように理解し、解決の道筋を見出すことができるかに焦点を当てています。この本は、レヴィンの実践的な洞察に基づいており、社会科学における重要な問題に対する彼のアプローチを示しています。レヴィンは心理学に多大な影響を与え、この本は彼の古典的な名著として知られています。
本書は主に3部構成になっています。第1部「文化の変更に関する諸問題」では、アメリカとドイツの社会心理学的差異、文化の再建、ドイツの特殊例、行為、知識、および新しい価値の受容について論じられています。第2部「対面集団における葛藤」では、社会的空間における実験、結婚における葛藤の背景、時間的展望とモラール、産業における慢性的葛藤の解決に焦点を当てています。第3部「集団間の葛藤と集団所属性」では、少数集団の心理社会学的諸問題について詳細に掘り下げています。
全体として、『社会的葛藤の解決』は、文化、家族、工場などの小規模な対面集団、および少数集団の社会心理学的問題を含む、社会生活の実践的な問題に対する「診断」と解決策の探索を取り扱っています。本書は、レヴィンの理論的かつ実践的な洞察を提供し、社会科学者、心理学者、および広い範囲の学際的な研究者にとって価値ある資料です。
社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」
マックス・ヴェーバーの「社会科学と社会政策にかかわる認識の『客観性』」において、ヴェーバーは社会科学における客観性の概念とその限界を探求しています。彼は社会科学が、実際には研究者の価値観や「こうあってほしい」という願望を反映しているにすぎないと直観し、この点に疑問を投げかけました。ヴェーバーによれば、社会科学の出発点は実践的な動機にあり、政治的な判断に価値判断を与えることが、社会科学に求められていた役割でした。しかし、この過程で「あるもの」(存在)と「あるべきもの」(当為)の区別が曖昧になり、経済学などの分野では倫理的な観点から「あるべき社会」の姿を描く試みがなされましたが、これは客観的な妥当性を持つものではないとヴェーバーは指摘しています。
彼は科学が目的を達成するための手段に関して答えを提供できるという立場を取ります。科学の目的は、ある目的を達成するために最も適切な方法を導き出すことにあるとヴェーバーは述べています。これは、科学が「目的合理的」なアプローチを取ることを意味しています。つまり、特定の目的を達成するためにどの手段が最も効果的かを判断することが科学の役割であるということです。
また、ヴェーバーは「価値自由」の概念と「理念型」の方法論を確立し、社会科学方法論についての記念碑的な論文を発表しました。この論文において彼は、社会科学の研究が特定の文化や価値観に依存しない客観的な真理を追求するべきだと論じています。これは後の社会科学の発展に大きな影響を与えました。
ヴェーバーの考え方は、社会科学における研究方法と目的に関する基本的な理解を提供し、その領域での客観性の追求がどのように行われるべきかについて深い洞察を与えています。彼の仕事は社会科学の方法論における基礎を築き、後の学者たちにとって重要な出発点となりました。
社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス
『社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス』は、大塚久雄氏によって著され、1966年に岩波新書から出版された書籍です。この本は、生きた人間の日々の営みを対象とする社会科学において、科学的認識がどのように成り立つのかという問題に取り組んでいます。特に、マルクスとヴェーバーという二人の思想家の方法論を比較検討し、その上で社会科学の今後の方向性を探る内容となっています。
本書は以下のような構成で展開されています:
- 社会科学の方法
- ヴェーバーとマルクス
- 経済人ロビンソン・クルーソウ
- ヴェーバーの「儒教とピュウリタニズム」をめぐって
- アジアの文化とキリスト教
- ヴェーバー社会学における思想と経済
大塚久雄氏は、1930年に東京大学経済学部を卒業し、西洋経済史を専攻していました。彼の著作には、『株式会社発生史論』や『近代欧州経済史序説』などがあり、また、マックス・ヴェーバーの研究や西洋経済史講座の編著も手掛けています。
『社会科学の方法―ヴェーバーとマルクス』は、社会科学がどのようにして科学的認識を構築できるか、また、マルクスとヴェーバーの方法論が社会科学にどのような影響を与えたかについての深い洞察を提供する作品です。この本を通じて、読者は社会科学の基礎的な問題について考察し、二人の思想家の比較を通じて社会科学の方向性について理解を深めることができるでしょう。
「科学技術と社会」を再考する
本書は、科学技術社会論(STS)という分野における過去と現在、さらには将来の展望について深く掘り下げています。内容は、日本、アメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国など、世界各地からの視点を含む多国間の視点から構成されています。また、STSの教育的側面や公共参加の実践的研究についても考察しています。さらに、イノベーション研究との接点、科学技術イノベーション政策研究の今後など、科学技術と社会の関係におけるさまざまなテーマについて基調講演やパネルディスカッションを通じて考察しています。
この本は、科学技術と社会の相互作用に関心のある研究者、学生、一般読者にとって貴重な資料となるでしょう。
戦後「社会科学」の思想
『戦後「社会科学」の思想 NHKブックス』は、著者森政稔氏による社会科学に関する深い洞察と分析をまとめた書籍です。この本では、戦後日本の社会とその変遷を、社会科学の視点から緻密に追っています。
具体的には、戦後日本を以下の4つの時代に区分し、それぞれの時代の社会科学の動向と思想を詳細に検討しています。
- 戦後期:欧米の近代民主主義などの思想を学び直すことが日本の再出発に不可欠とされた時代。
- 1950–60年代:高度経済成長の中で、大衆社会化が進み、欧米と同時代的な現象と捉えられるようになった時代。
- 1960–70年代:世界的に「奇妙な革命」が起こり、社会の大きな変化が見られた時代。
- 保守化と新自由主義化の時代:現代に至るまでの社会変化を、新保守主義や新自由主義の観点から検証する。
著者はこれらの時代区分を通じて、戦後日本における社会科学が、時代ごとにどのように社会を捉え、理解してきたかを描き出し、それぞれの時代に共有されていた問題意識や社会への視点を明らかにしています。さらに、これらの時代にわたる社会の変化を複層的に捉えることで、「現代とはどのような時代か」に対する深い理解を提示しています。
この書籍は、「現代とは何か」を理解し、運命論から抜け出し、可能な未来を切り開くための、公平かつわかりやすい「社会科学」の入門書として位置づけられています。
現代産業社会の展開と科学・技術・政策
『現代産業社会の展開と科学・技術・政策―人類社会形成の新しい時代に向けて』は、著者兵藤友博による著作です。この本は、21世紀に入って急速に世界化した産業経済、特に重化学工業化や情報通信技術の拡大、地球環境問題と資源問題、ブロック経済化、軍産複合体の常態化、AI技術の進歩、感染症の蔓延など、人類社会が直面する複層的な課題に対して、科学的真理性と市民的公共性を基盤とする知恵と価値を通じて、これらの問題を解き明かし、将来に向けての社会選択の重要性を説いています。
人類と産業社会、そして自然との関わりを深く探究し、複雑に絡み合うこれらの問題を、科学・技術・政策という視点から考察し、未来に向けての方向性を提示することを目的としています。
ヴェーバーとともに40年―社会科学の古典を学ぶ
『ヴェーバーとともに40年―社会科学の古典を学ぶ』は、著者である折原浩氏が長年にわたり、教養学部の教師としてマックス・ヴェーバーの研究と教育に取り組んできた成果をまとめた書籍です。この本では、社会科学の古典としてのヴェーバーの著作をどのように学び、そしてそれをどのように教えるべきかという問いに一貫して取り組んでいます。また、ヴェーバー研究の現状とその将来について、大学教育の在り方についての考察を含め、貴重な視点を提供しています。