1. 関数の基本概念
関数を一つの機械と考えてみましょう。この機械に何か入力を与えると、それに基づいて何か出力を返します。関数において、この「入力」が独立変数であり、「出力」が従属変数です。
関数を表す一般的な記法は、\(f(x)\) という形です。ここで、
– \(f\) は関数を表す名前です。
– \(x\) は独立変数であり、関数に入力される値です。
– \(f(x)\) は\(x\)に対する関数の出力、つまり従属変数を表します。
独立変数は、その名の通り、他の変数の影響を受けずに自由に値を変えることができる変数です。一方、従属変数の値は、独立変数の値に「従って」変わります。つまり、独立変数の値に基づいて計算や操作を行うことで、従属変数の値が決定されます。
例えば、関数 \(f(x) = x^2\) を考えてみましょう。ここで、\(x\) は独立変数で、\(f(x)\)、すなわち \(x^2\) は従属変数です。この場合、\(x\) の値によって \(f(x)\) の値が変わります。たとえば、\(x = 2\) のとき、\(f(x) = 2^2 = 4\) となります。\(x\) の値を変えることで、\(f(x)\) の値も変わります。
関数は、一つの変数が他の変数に依存する関係を示すのが分かりました。ここでまた一つ例を見てみましょう。
例:あるレストランの週末の売り上げ(S)が、その週末の観光客の数(T)に依存する場合を考えます。あくまでこれは一例ですが、この関係を表す関数は以下のように表されます。
\[ S = 2,000 + 50T \]
ここで、
- Sはレストランの週末の売り上げ(金額)
- Tはその週末の地域に訪れる観光客の数
- 2,000はレストランの基本売上額
を示します。
この関数は、観光客の数が多くなるほど、レストランの売り上げが増加することを示しています。例えば、
- T(観光客の数)が100の場合、S(売り上げ)は \(2,000 + 50 \times 100 = 7,000\) となります。
- Tが200の場合、Sは \(2,000 + 50 \times 200 = 12,000\) となります。
この例では、Tが独立変数(与えられた値)、Sが従属変数(Tの値に依存する値)です。このような関数は、観光業の影響を受けやすいビジネスにおいて、収入予測や計画立案に役立つ可能性があります。
2. 一般形式の関数
関数の正確な形が分からない場合、一般形式で表すことができます。
例えば、消費者の満足度(S)が製品の品質(Q)に依存するとします。この関係を表す関数は次のようになるかもしれません:
\[ S = f(Q) \]
ここで、
- Sは消費者の満足度。
- Qは製品の品質。
- 「f」は「Qの関数」という意味で、代数的な記号ではありません。
この関数は、製品の品質が高くなるほど、消費者の満足度も高まるという関係を示しています。ただし、この一般形式では、満足度と品質の関係の具体的な詳細は明示されていません。それは、f(Q)が具体的な式で表されるまで未知です。しかし、この表現は、品質が消費者の満足度に重要な影響を与えるという基本的な概念を伝えています。
基本的な考え方は、製品の品質 Q が消費者の満足度 S にどのように影響を与えるかを理解することです。S=f(Q) という式は、この関係を数学的に表現しています。ここで、f は関数であり、品質 Q がどのように変化するかに基づいて満足度 S がどのように変化するかを示します。
例えば、次のように考えることができます:
- 直接的な関係: 品質が高くなると、満足度も直接的に高くなる。これは線形関数 \(S=aQ+b\) で表すことができ、ここで a と b は定数です。この場合、Q の増加は S の均等な増加に直接的に関連します。
- より複雑な関係: 品質の増加が最初は満足度を大きく向上させるが、ある点を超えるとその影響が小さくなる。これは対数関数 \(S=a\log(Q)+b\) で表現できます。
このように、S=f(Q) の式は、品質 Q の変化が満足度 S にどのように影響するかを示す方法です。異なるタイプの関数 f は、この関係を異なる方法で表現します。重要なのは、品質の変化が満足度に与える影響の性質を理解し、それを数学的にモデル化することです。
線形関数の例
線形関数の例として、満足度 S が品質 Q にどのように依存するかを示す具体的な関数を考えます。
\[ S = 10Q + 50 \]
この式では、S(消費者の満足度)は、Q(製品の品質)の線形関数として表されています。ここで、「10Q」という項は、品質 Q の値に比例して満足度がどのように増加するかを示し、「50」という定数は、品質がゼロであったとしても基本的に存在する満足度のレベルを表します。
具体的には、品質 Q の値が1単位増加するごとに、満足度 S は10単位増加します。この「10」という係数は、品質と満足度の間の直接的な関連性の強さを示しています。したがって、品質が0から100まで増加すると、満足度は以下のように計算できます:
- 品質 Q = 0 の場合、S = 10×0 + 50 = 50
- 品質 Q = 100 の場合、S = 10×100 + 50 = 1050
この関係から、品質の向上が満足度の向上に直接的に貢献することがわかります。この線形モデルは、品質と満足度の間のシンプルで直接的な関係を数学的に表現しており、品質改善の効果を予測するのに役立ちます。
3. 関数の定義域と値域
経済学では、関数は変数間の関係を示すために広く使用され、これを理解する上で「定義域(Domain)」と「値域(Range)」という概念が重要です。
定義域(Domain)は、関数に入力できる独立変数の値の範囲を指します。経済学で扱う多くの変数、例えば価格や生産量は、実際には負の値を取ることがないため、その定義域は正の実数やゼロに限定されます。
値域(Range)は、関数によって出力される従属変数の値の範囲です。これは、定義域内のすべての可能な入力値に対して関数が取りうる出力値の全範囲を含みます。
例として、ある商品の需要関数が以下のように表される場合を考えます:
\[ D(p) = 100 – 2p \]
ここで、\(D\)は需要量、\(p\)は商品の価格を表します。この関数の定義域は、価格が負になり得ないため、\(p \geq 0\)です。価格が50単位を超えると需要量が負になるため、経済的に意味のある範囲では、価格の上限も考慮されます(この場合、\(p \leq 50\))。
この関数の値域は、\(D(p)\)が取り得る値、つまり需要量の範囲です。価格が0の時、需要量は最大で100となります。価格が50の時、需要量は理論上0になります。したがって、この需要関数の値域は\(0 \leq D(p) \leq 100\)です。
定義域と値域は、関数がどのような入力値を取り、どのような出力値を生成するかを理解する上で基本的な概念です。経済学では、これらの概念を用いて市場の動向や経済的な関係を分析し、予測することが可能になります。