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研究計画書の役割(修士課程)
修士課程での経済学研究科の大学院の院試出願・入試での一環で研究計画書の提出が求められ、この対策も時間をかけなければいけません。大学院によってはリサーチプロポーザル、修論計画書などと名称は変わりますが、おおよそどのような事に興味があり、大学院で学び修士論文で書いてみたいか(重要性、方法論なども)ということを記入する必要があります。
もちろん、この研究計画書は、専門科目に関連する筆記試験と口頭試験の実施に加えて、 志望の理由、学業成績、英語スコアなどの出願のうちの1つのパートであり、最終的な合格かどうかはこの研究計画書だけでは判断はされませんが、修士での学生生活をする上で大切なテーマになってきます。というのも最終的には修士課程で残すものは修士論文であり、これが修士の期間での集大成となるからです。
各大学院経済学研究科での研究計画書
ここで各大学院の募集要項での研究計画書では何を求められているかチェックをしましょう。大学院で各コースによって書くことが変わってきますが、今回はミクロ・マクロ経済学での受験でのものを見てみます。また様々な募集要項で出願もできますが、今回は一般でのものとなります文字数は日本語のケースとなります。)。
・東京大学大学院経済学研究科
– 研究計画書
– 今後の研究テーマ、研究目的及び研究方法
– 5000文字
・一橋大学大学院経済学研究科
– 研究計画書
– 研究の目的・重要性・方法等
– 2000 字以上 3000 字以内
・京都大学大学院経済学研究科
– 研究計画書
– 研究題目
研究計画の概要
(課題の背景、当該研究テーマを選んだ理由、問題意識、先行研究)
(研究の目的)
(研究計画)
(期待される成果)
(研究計画遂行能力に関連した学修歴(学修予定)及び研究準備状況、参考文献等)
– 3000から4000字程度 (文字数の指定はありませんが、フォーマットがありこの程度の文字数となります)
・大阪大学大学院経済学研究科
– 研究計画書
– 内容は、本研究科入学後の研究計画に関するもの
– 3600文字以内 (1枚 40 字×30 行)
・早稲田大学大学院経済学研究科
– 志望理由書
– 「修士課程に入学したら研究しようと考えているテーマとその内容」、「そう考えるに至った個人的あるいは社会的背景、問題意識、研究の社会的意義」について具体的に記述、研究の具体的な方法(データ収集や実証手法あるいは理論モデル)については、記述する
必要なし
– 文字数は 1000 字以内(参考文献は含まない)
・慶應義塾大学大学院経済学研究科
– 研究計画書
– 研究テーマ
この研究の意義・問題意識
この研究の系譜と背景
研究計画
期待される成果と展望 (研究のアプローチ,分析方法,研究計画等)
卒業論文,修士論文,その他の発表論文,未発表論文
2500から3000 字程度 (文字数の指定はありませんが、フォーマットがありこの程度の文字数となります)
各大学院の比較
このように見ると、各大学院経済学研究科で文字数もばらつきがあり、フォーマットがあるもの、ないものもあり、記入する内容も決まっているところもあれば、かなりざっくりとなっているところがあります(大学院によってはサンプルとしてこのように書いてくださいと指定されているところもあります)。
東京大学経済学研究科の経済学コースの研究計画は今後の研究の研究テーマ、研究目的、研究方法についての内容で日本語ですと5,000文字の分量となっており、分量は多い上に、フォーマットも特にありません。
大学院での出願の場合、併願で出す方が多いと思いますが、おすすめとしてはまず、京大に沿ったフォーマットでそれぞれの文字数に合わせて書いてみることをおすすめします。この書き方がやはりスタンダードになっており、東大や一橋もこのやり方に沿って書いている方が合格しております。
そして文字数が少ない出願校に対しては、重要度が低いところを削っていったり、東大などでは書いた詳細な箇所を少し要約して書いていくのが良いでしょう。ですので、まずは一つ4000文字完成すれば、どの出願校にも応用がききます。
大学院によっては早稲田のようにかなり短いところもあり、自身の出願校の全てがこのぐらいの文字数であれば最初からこのぐらいの分量で書いてしまいましょう。
書く内容ついて
大枠でいうとミクロ経済とマクロ経済学と言う分け方になり、そこから実証経済と理論経済と言う枠組みもあります。テーマとしてはミクロ経済学マクロ経済学をテーマにどちらでも選んでも大学院の院試の中では受かりやすいと言う事はなく、それぞれのテーマの教授がいます。もちろん計量経済学的に手法的な分野もありますが今回は上記の分け方で説明します。
自身の興味がどこにあるかがまだわからない場合というのが多々あります。特に大学での学部では違う学問をやっていたり、大学の途中で経済学を学んでみたいと興味を持ち始めて大学院から経済学への道へ進もうと思ったときには自身が興味を持った内容がマクロに近いか、ミクロに近いかでまずは決めても良いかと思います。
例えばもともとGDPなどのテーマであったり、一国の成長、貿易の話などに興味がある場合でしたらマクロのトピックになりますし、一人ひとりの労働や、それにまつわる規制、その他人々それぞれの行動に興味がある場合はミクロのトピックを見てみましょう。
その分け方が自然にすんなりでてくるのがもちろん良いのですが、どうしても分からない場合があるかと思います。その場合はまずは、どのような分野で論文があるのかをみてみると良いでしょう。
https://ideas.repec.org/top/top.journals.simple.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/経済学のジャーナルの一覧
などで、まずどのようなジャーナルがあるか調べます。例えば、労働に興味がある場合は、リストにもあるような、Journal of Labor Economicsや、Labour Economicsのタイトルだけを見て興味がありそうな選び方で、それがマクロよりか、ミクロよりか見てみましょう。
論文によって、マクロの枠組みでの労働経済学、ミクロの枠組みでの労働経済学とあるように、例えば他でも環境経済学、教育経済学、開発経済学など〇〇経済学という枠組みであります。
国単位で大きいことをやっていそうなのでマクロの枠組みなのかと思いきや、使っているデータはミクロレベルのデータだったりということもあります。
この辺りは論文への慣れも必要でありますので、最初は余り意識せず興味を持ったテーマから入るのでも大丈夫です。
次に実証と理論的な分け方です。
研究によっていは現在の経済理論から更に一歩進めた形で展開していく理論的な論文があります。この場合は紙と鉛筆を使ってモデルを考える形で、またはデータを使って(それを統計ソフトで解析する)導かれる実証研究とあります。
大きく分けて実証研究か理論研究が良いのかというところでは、(特にこれから経済学をやろうと院を志望している方は)実証研究にしておくのが良いでしょう。
この理由としてある程度、理論研究では蓄積が必要というのがあります。院試まででの期間で筆記の勉強もしなければならないので、計画書だけに時間をさけません。もちろん大学院でゲーム理論の最先端をやりたいとしても、この辺りは学部から経済学に精通している受験者と経済学的のバックグラウンドが違ってきてしまうので、その辺りは興味もある程度にして、研究計画書では実証のことを書いておくと良いでしょう。
であるからといって実証での書き方が簡単と言っているわけではありません。現在この研究ではどの辺りがフロンティアであるのか、また修士課程の間ではどの程度できるのか、データの制約などはないかなど知っておく必要があります。
まずは書き始める前でのことについてこれまで書いてきました。特に学部が経済学部ではない場合はどこからスタートして良いかわからない場合もあるかと思います。その場合はお問い合わせいただければと思います。
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