予算制約線 – 経済学の数学入門(経済数学)

予算制約の傾斜についての解説

予算制約の傾斜を理解するためには、まず消費者が特定の予算内で異なる商品間でどのように選択を行うかの基礎から考えてみましょう。ここでは、消費者が20,000円の所得を持っており、二つの商品、XとYを購入しようとしている状況を想定します。商品Xの価格が4,000円で、商品Yの価格が1,000円です。

 

予算制約の基本

消費者の予算制約は、所得内で可能な商品の購入組み合わせの限界を示します。すなわち、消費者は所得(20,000円)を超える費用の商品を購入することはできません。この予算内で、消費者は商品XとYを任意の組み合わせで購入できますが、その選択は商品の価格によって大きく影響を受けます。

 

 

 

予算制約の傾斜

予算制約の傾斜は、商品Xと商品Yの価格の比率を示しています。具体的には、「商品Xを1つ減らしたときに、解放されるお金でいくつの商品Yを追加で買えるか?」ということを数値で表します。

 

傾斜の計算方法

傾斜の計算方法は次の通りです。

\[ \text{傾斜} = -\frac{\text{商品Xの価格}}{\text{商品Yの価格}} \]

この場合、商品Xの価格が4,000円、商品Yが1,000円なので、傾斜は

\[ {-}\frac{4,000}{1,000} = {-}4 \]

です。これは、商品Xを1つ減らすごとに、そのお金で商品Yを4つ追加できることを意味します。負の符号は、一方の商品をもっと買うためには、もう一方の商品を少なくしなければならないというトレードオフ(相互交換)の関係を示しています。

 

 

 

 

価格の変動

「価格の変動」とは、商品の価格が上がったり下がったりすることを意味します。例えば、商品Yの価格が1,000円から2,000円に上がる場合、消費者が同じ予算で購入できる商品Yの量は減少します。

傾斜の変化を理解する

商品Yの価格が上がると、商品Xと商品Yを交換する「レート」が変わります。具体的には、商品Xを1個減らして手に入れることができるお金で、以前は商品Yを4個買えましたが、価格変動後は2個しか買えなくなります。

この「交換レート」の変化を数学的に示すと、最初の傾斜が

\[ {-}\frac{4,000}{1,000} = {-}4 \]

から、新しい傾斜が

\[ {-}\frac{4,000}{2,000} = {-}2 \]

に変わります。この計算は、商品Xの価格(4,000円)を商品Yの新しい価格(2,000円)で割ることによって行います。

簡単に言うと、商品Yの価格が上がると、同じ予算でより少ない商品Yを買うことしかできなくなります。そして、商品Xを1個減らしたときに、以前は4個の商品Yが買えたのが、価格が上がった後は2個しか買えなくなるのです。つまり、商品Xと商品Yを交換する「レート」が悪くなるわけです。このレートの変化が、予算制約の傾斜の変化として表されます。

所得の変動

所得が12,000円に減少した場合、予算制約式は以下のように変わります。

\[ 4,000X + 1,000Y \leq 12,000 \]

しかし、商品XとYの価格比(傾斜)は変わらないため、傾斜は依然として{-}4です。所得の減少は、予算制約線を原点に向かって平行移動させますが、傾斜自体は変わりません。これは消費者が選択できる商品の組み合わせの範囲が狭まることを意味しますが、商品Xに対する商品Yの交換比率は変わらないため、基本的な選択のトレードオフは同じままです。

具体例

もともと消費者は、最大で商品Xを5単位(20,000円 ÷ 4,000円)、または商品Yを20単位(20,000円 ÷ 1,000円)購入できました。所得が12,000円に減少すると、商品Xを最大3単位(12,000円 ÷ 4,000円)、商品Yを最大12単位(12,000円 ÷ 1,000円)購入できるようになります。

このように、所得の変化は消費可能な商品の絶対量に影響を及ぼしますが、商品間での相対的な選択のバランス(傾斜)は変わりません。これが予算制約の基本的な理解と、所得の変化が予算制約に与える影響の解説です。