ポイント
まずは需要と供給の形を見てみましょう。それを次で念頭に解説します。
需要と供給
・需要量
\( Q_{D} \): これは価格によって変動する消費者による商品やサービスの要求量です。需要関数 \( Q_{D} = f(P) \) によって表されます。
例: \( Q_{D} = -1P + 30 \)
・供給量
\( Q_{S} \): これは価格によって変動する生産者による商品やサービスの供給量です。供給関数 \( Q_{S} = g(P) \) によって表されます。
例: \( Q_{S} = P {-}50 \)
価格 \( P \): 商品やサービスの価格で、\( P > 0 \) です。
2つの関連財の需要・供給関数
これは、2つの商品の価格が互いに影響を及ぼす場合に使用されます。
・需要関数
\( Q_{D1} = Q_{D1}(P1, P2) \)
\( Q_{D2} = Q_{D2}(P1, P2) \)
・供給関数
\( Q_{S1} = Q_{S1}(P1) \)
\( Q_{S2} = Q_{S2}(P2) \)
例:
\( Q_{D1} = a1 + b1P1 + c1P2 \)
\( Q_{D2} = a2 + b2P1 + c2P2 \)
(ここで \( a1 > 0 \), \( b1 \) と \( c1 \) の符号は財の性質に依存する)
補足
- 需要関数と供給関数では、価格が変化すると数量も変化します。通常、需要量 \( Q_{D} \) は価格が上がると減少し(負の傾き)、供給量 \( Q_{S} \) は価格が上がると増加します(正の傾き)。
- 関連財の分析では、2つの商品間の相互関係を考慮します。たとえば、補完財の場合、一方の商品の価格が上がると、もう一方の商品の需要も減少する可能性があります。
説明
この分析には、数学の公式だけでなく、経済・経営に関する特定のルールも必要です。以下に「需要と供給の分析」に必要なルールをまとめています。今は需要量と供給量がゼロ以上となる非負の数量、また市場の均衡の理解に集中して学びましょう。
基本的なルール
- 非負の数量:需要量と供給量は、いずれもゼロ以上の値を取ります。文章題で明示されていなくてもこの条件を適用します。
- 市場均衡の理解:需要と供給の分析では、市場均衡点(需要曲線と供給曲線が交差する点)を見つけることが重要です。この均衡点は、市場での均衡価格と均衡数量を表します。均衡点の計算や理解は、経済学における数学の中心的な要素です。
- 線形と非線形の区別:需要や供給の関係をモデル化する際、多くの初学者は線形の関数(一次関数)を使用します。これは分析を簡単にするためです。しかし、実際の経済では、需要や供給の関係は非線形(例えば、二次関数や対数関数)で表されることがあります。状況に応じて、適切な関数形を選択する必要があります。
- 価格の弾力性:需要や供給の価格弾力性(価格の変化が需要量や供給量にどのように影響を与えるか)を理解することも重要です。弾力性は、需要や供給の反応の度合いを数値化したもので、これにより価格変更が市場に与える影響を分析できます。
- シフトと動きの区別:需要曲線や供給曲線の「シフト」と「動き」は異なります。価格の変化による数量の変化は「動き」を示し、他の要因(例えば、所得の変化、好みの変化、代替品の価格変化など)による需要や供給曲線自体の変化は「シフト」と呼ばれます。
- 限界分析:経済学では、限界コスト、限界収益、限界効用などの概念が重要です。これらの概念は、追加的な一単位の変化に焦点を当てるもので、微分計算を使用して分析されることが多いです。
- 制約条件の考慮:経済モデルでは、予算制約や生産能力などの制約条件を考慮する必要があります。これらの制約は、需要や供給の分析において重要な役割を果たします。
需要関数と供給関数
- 価格が変動すると、需要量も変動します。価格と需要量の関係を表す式を「需要関数」といいます。同様に、価格と供給量の関係を表す式を「供給関数」といいます。
- 需要関数で扱う変数は、価格と需要量の2つです。需要関数は、他の変数の値が一定であるという前提のもとで、価格と需要量の関係を表します。この「他の変数の値が一定」という条件は非常に重要です。
変数の変動とその影響
- 他の変数が変動する例としては、税額の変動や代替財の価格の変動があります。このような変動は、需要関数の形を変える可能性があります。
- 代替財とは、効用が同じ財の組合せのことで、例えば牛肉と豚肉、バターとマーガリンなどがあります。
関連財の需要関数
- \( Q_{D1} = 120 {-}10P_{1} + 3P_{2} \)
- \( Q_{D2} = 160 + 8P_{1} {-}4P_{2} \)
解説
- \( Q_{D1} = 120 {-}10P_{1} + 3P_{2} \): この式では、財1の価格\( P_{1} \)が1単位上昇すると、財1の需要量\( Q_{D1} \)は10単位減少することを示しています。また、財2の価格\( P_{2} \)が1単位上昇すると、財1の需要量は3単位増加することを示しています。
- \( Q_{D2} = 160 + 8P_{1} {-}4P_{2} \): この式では、財1の価格\( P_{1} \)が1単位上昇すると、財2の需要量\( Q_{D2} \)は8単位増加することを示しています。また、財2の価格\( P_{2} \)が1単位上昇すると、財2の需要量は4単位減少することを示しています。
需要関数と供給関数について
需要関数
ある財に関して、その価格 \( P \) が変動すると、その財に対する需要量 \( Q_D \) が変化します。この関係を表す関数 \( Q_D = f(P) \) を「需要関数」といいます。ここで、\( Q_D \) の添字「D」は「demand」(需要)の略で、需要量を指します。この関数は、価格 \( P \) について解き、逆関数の形 \( P = g(Q_D) \) で表すこともあります。需要関数においては、価格と需要量の関係が逆相関になっていることが一般的です。つまり、価格が上昇すると需要量は減少し、価格が下降すると需要量は増加します。
供給関数
一方で、生産者の視点から見ると、財の価格 \( P \) が高くなると、より多くの供給量 \( Q_S \) を市場に提供したくなります。この関係を表す関数 \( Q_S = h(P) \) を「供給関数」といいます。\( Q_S \) の添字「S」は「supply」(供給)の略です。供給関数では、価格の上昇が供給量の増加につながるため、価格と供給量は正の関係にあります。
需要関数と供給関数の重要性
市場経済において、需要と供給は商品やサービスの価格決定における基本的な要素です。需要関数と供給関数は、市場の動きを理解し、予測する上で不可欠なツールです。これらの関数を分析することにより、特定の価格での需要と供給の量を予測し、市場均衡点(需要量と供給量が等しくなる点)を見つけることができます。
例えば、商品の価格が上昇すると、需要量は通常減少し、供給量は増加します。この逆の動きは、市場均衡に向かう力として働きます。需要が供給を上回る場合、価格は上昇し、逆に供給が需要を上回る場合、価格は下降する傾向にあります。このように、需要関数と供給関数は、市場の価格動向や数量の変化を理解し、予測する上で重要な役割を果たします。また、経済政策の立案やビジネス戦略の策定においても、これらの概念は重要な基礎となります。