【横浜国立大学経済学部】2023年度編入試験 – 解答、経済学Ⅱ

(1)

この形状の効用関数はCRRA効用関数と呼ばれます。CRRAはConstant Relative Risk Aversion、相対的リスク回避度一定(CRRA)型と言われます。

相対リスク回避度(γ)が一定である特徴を持ち、以下のように表されます。

v(x1,x2,,xI)=i=1Iαixi1γ1γ

ここで、αiは重み係数、xiは消費財の量、γはリスク回避度を表します。

 

 

(2)

効用最大化問題の解法

意思決定者の所得に関する価値関数 v(w)Cw1δ の形状を取ることを示します。

1. 効用最大化問題の定式化

意思決定者は予算制約の下で効用を最大化するように消費財の組み合わせを選択します。この問題は次のように定式化されます。
max v(x1,x2,,xI)=i=1Iαixi1γ1γ subject to i=1Ipixi=w

2. ラグランジュ乗数法による解法

ラグランジュ乗数法を用いてこの問題を解きます。ラグランジュ関数は次のようになります。

L=i=1Iαixi1γ1γ+λ(wi=1Ipixi)

各財 i について、一階の条件は次のようになります。

Lxi=αixiγλpi=0

これを変形すると、

xi=(αiλpi)1γ

これを予算制約に代入して整理すると、

λ=(i=1Iαi1γpiγ1γw)γγ1

この λxi の式に代入すると、最適な消費量 xi が得られます。

xi=(αi1γpiγ1γ)j=1Iαj1γpjγ1γw

3. 間接効用関数と価値関数

最適な消費量 xi を効用関数に代入すると、間接効用関数 v(p,w) が得られます。
v(p,w)=i=1Iαi((αi1γpiγ1γ)j=1Iαj1γpjγ1γw)1γ11γ ここで、価格 pi は所与なので、間接効用関数は所得 w のみの関数とみなせます。これが価値関数 v(w) です。
v(w)=Cw1γ ただし、
C=i=1Iαi(αi1γpiγ1γj=1Iαj1γpjγ1γ)1γ11γ

4. δ の導出

価値関数の指数 1γ1δ とおくと、
δ=γ となります。

以上より、この意思決定者の所得に関する価値関数 v(w) は、

v(w)=Cw1γ

の形状を取り、δ=γ であることが示されました。

 

(3)

加法分離可能な効用関数は、次の形を取ります。

v(x1,x2,,xI)=i=1Iui(xi)

この形式の効用関数は、各消費財 xi に対する効用が他の消費財の消費量に依存しないことを示しています。つまり、各財の効用は独立して計算され、合計されます。しかし、この仮定は現実の消費パターンを説明する際に問題を引き起こすことがあります。

加法分離可能性が現実の消費パターンを説明できない理由

1. 補完財の存在
・例: コーヒーと砂糖
・理由: コーヒーと砂糖は補完財であり、一緒に消費されると効用が高まります。加法分離可能な効用関数では、コーヒーと砂糖の消費量が相互に影響を与えることが考慮されません。そのため、消費者がコーヒーを多く消費する場合、砂糖の消費も増えるという現実のパターンを説明できません。

2. 代替財の存在
・例: バターとマーガリン
・理由: バターとマーガリンは代替財であり、どちらか一方が価格上昇した場合、もう一方の消費が増える傾向があります。加法分離可能な効用関数では、バターとマーガリンの効用が独立して計算されるため、価格変動による消費パターンの変化を説明できません。

3. 相乗効果の欠如
・例: 食事と飲み物
・理由: 食事と飲み物は一緒に消費することで効用が高まります。例えば、高級なディナーとそれに合うワインは、一緒に消費することで非常に高い満足感を得られます。加法分離可能な効用関数では、このような相乗効果を表現することができません。

現実的な消費パターンの例

・コーヒーと砂糖の例

朝食時にコーヒーを飲む人は砂糖も使うことが多いです。加法分離可能な効用関数では、コーヒーの効用と砂糖の効用を別々に計算しますが、現実には一緒に消費することで得られる満足度が高くなることが一般的です。

・バターとマーガリンの例

健康志向の人がバターの代わりにマーガリンを使う場合、バターの価格が上昇するとマーガリンの消費が増えることがあります。加法分離可能な効用関数では、この代替効果を正確に捉えることができません。

・食事と飲み物の例

高級レストランでの食事に合わせて高品質のワインを選ぶことで、全体の食事体験の効用が増加します。加法分離可能な効用関数では、食事と飲み物の効用が独立して計算されるため、これらの相乗効果を捉えることができません。

以上のように、加法分離可能な効用関数は、消費財間の相互作用や相乗効果を無視するため、現実の消費パターンを正確に説明するのが難しいことがあります。