経済学研究科(修士)の院試を考えるとき、つい「大学のブランド」や「難易度」から入ってしまいがちです。ですが、研究計画の分野選びをも戦略的に進めることも大切です。
大学院にはそれぞれ強み、人員配置がずっとあったり、または一時的に研究分野の偏りが生まれます。たとえば(あくまで例として)「この大学はこの領域が強い一方で、別の領域は教員層が厚くない」と感じられることがあります。逆に、別の大学院では「幅広く揃っていて、比較的オールマイティに対応できそうだ」という印象を持つこともあります。
この差は、学部レベルの授業の多様さとは別物です。修士では、指導体制や研究会、ゼミ、指導教員の専門性がそのまま受験・入学後の研究生活に影響します。したがって、院試対策は「自分がやりたい研究」だけで完結せず、大学院側の受け皿(教員・分野の配置)を見ながら組み立てる必要が出てきます。
内部進学や準備が整っている人は「そのまま一直線」
もちろん、すべての人が戦略的にテーマを寄せる必要があるわけではありません。
たとえば、
・学部時代からゼミや研究で関心が固まり、文献も読み、研究テーマが定まっている
・志望先の先生や研究領域について十分調べ、研究計画書の完成度も高い
・東大経済→東大経済学研究科、一橋経済→一橋経済学研究科のように、内部学生として継続的に準備できている
このようなケースでは、学部で興味を持ったテーマをそのまま院に持ち込む形でも十分に勝負になります。加えて、国立上位や早慶などで早い段階から研究の方向性を作れている方は、院試段階で「研究の筋」が立っていることが多く、計画書も“そのまま”で説得力が出やすいです。
しかし
・「東大・一橋に行きたい」という志望は強いが、研究テーマの詰めがまだ甘い
・興味はあるが、分野設定・問いの立て方・先行研究整理が固まりきっていない
・どの先生の指導に繋がるテーマなのかが曖昧
この場合、同じ「やりたいこと」を書いても、受験先によって評価が変わり得ます。
研究テーマ×教員層
院試の研究計画書は、多くの場合、そのテーマは修士レベルで実行可能か、先行研究を踏まえて問いが立っているか、方法論(理論・計量・実証・制度分析など)が妥当かなどの他で、そして何より、その大学院で指導・議論が成立するかも重要です。
ここで効いてくるのが「分野の教員層の厚み」です。仮に、ある大学院でその分野の先生が少ない、もしくは研究会・ゼミが薄い領域だった場合、研究テーマ自体が悪くなくても、大学院側からすると「指導体制が弱いかもしれない」、「受け入れても十分な議論環境を提供しにくい」、
と判断される可能性があります。
結果として、その分野を書いたら不利になるという現象が起こり得ます。たとえば、東大経済学研究科を受けるとして、その分野の先生の層が厚くない領域で研究計画を書いた場合、本人の完成度が高くないと特に不利になりやすい、というイメージです(もちろん例外はあります)。
つまり、準備が万全ではない状態でトップ校を狙うときほど、「やりたい研究」だけでなく「受かりやすい配置」に計画書を置くという発想が現実的になってきます。
大学院に合わせて計画書を寄せるのは戦略
ここまでの話を踏まえると、ケースによっては大学院に合わせて研究計画書を調整するのは十分に合理的です。
受験校が1つなら「受け皿に乗る」設計がもちろん強いです。
その研究科で厚い領域、近い研究会・ゼミが想定できる領域、指導可能性が高い方法論(理論/計量/制度分析など) に寄せていくと、計画書の説得力が上がりやすいです。
また、併願するなら「書き分け」も選択肢です。時間が許すならそれぞれ別の計画書を書くのもアリです。
ただ、おそらくそれは時間がないと思うので、領域横断テーマなら、強調点を変えるのも有効です。研究テーマが複数領域にまたがる場合は、例えばそちらの主要参考文献を変えてよりそちらの分野の経済学に見せたり、もう一つの出願ではまた違う色の主要参考文献を置いて別分野にも見せたりすることも1つです。
もちろん、ほぼ1つの軸での研究分野でどの大学院研究科で出せるものは多いので、それでやれれば良いのは良いのですが、分野の教員層の厚み、指導可能性の高いテーマ設計は考えながら計画書を進めるのが良いでしょう。