【国際経済学】教科書・参考書おすすめ本(入門,大学学部,大学院でのテキストランキング)

国際経済学の流れ

国際貿易の研究は、経済学の中でも最も古い専門分野の1つです。それは16世紀に考案され、その後、デイビッド・ヒューム、アダム・スミス、デイビッド・リカード、ジョン・スチュアート・ミルなど、18世紀と19世紀の主要な経済学者を引き付けました。国際経済問題に関する彼らの研究は、現代の経済学で使用される重要な分析ツールを生み出しました。また外国貿易が国内価格の水準にどのように影響するかを示すために、デビッド・ヒュームによって貨幣数量理論の初期のものができ、需要と供給の法則の最初の完全な定式化は、国際市場で価格がどのように決定されるかを説明するためにジョン・スチュアート・ミルによって開発されました。国際経済学はその後も主要な経済学者、ポールサミュエルソン、ワシリーレオンチェフ、バーティルオーリン、ジェームズミードなど、多くのノーベル経済学賞受賞者によって研究されてきました。

 

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【new】国際経済学関連での新しい書籍についてもこちらで紹介します。

2024/03 – 入門国際経済学 (第2版)大川 良文

「入門国際経済学(第2版)」が発売されました。目次では前回同様ですが大幅にアップデートされております。直近での入門である「グラフィック国際経済学」および「現実からまなぶ国際経済学」同様、国際貿易、国際収支、貿易政策、為替レートなどの基本的なトピックが含まれています。これらは国際経済学の基本的な構成要素となります。第4章は交易・特化の利益についての一般均衡分析を行っています。

目次

第1章 国際経済学の世界
第2章 国際収支
第3章 貿易自由化と保護貿易政策―余剰分析
第4章 交易・特化の利益―一般均衡分析
第5章 国際分業モデル
第6章 国際労働移動
第7章 為替レート
第8章 為替相場制度と国際資本移動

 

 

 

 

 

おすすめ国際経済学テキストのリスト

1 現実からまなぶ国際経済学
2 クルーグマン国際経済学 理論と政策
3 国際経済学15講
4 国際経済学入門 (経済学叢書Introductory)
5 入門 国際経済学
6 実証から学ぶ国際経済
7 国際経済学入門((文眞堂)
8 国際経済学 (有斐閣アルマ)
9 演習で学ぶ 国際経済学へのいざない

 

 

 

 

 

現実からまなぶ国際経済学

 

 

現実からまなぶ国際経済学

 

国際経済学の理論と実証のバランスを意識しており、社会との関わりをより理解できるでしょう。最初に実際のデータを見るスタイルは、「アセモグル/レイブソン/リスト マクロ経済学」のようにしてあり、より現実社会と近づくことができます。現在の学部向け国際経済学の標準テキストとなるでしょう。「第Ⅱ部 なぜ貿易は行われるのか」でより理論体系を学び、「第Ⅲ部 貿易問題と解決の枠組み」でより実証的な側面を意識して書かれております。

より興味をもったトピックについては参考文献での論文も豊富ですので、進んで読んでみましょう。

 

【はじめに等を確認する】
――編集部から本書の企画の話があったとき、どのように思われましたか?
伊藤
ちょうど自分の授業運営でもどのような教授法をとれば学生が興味を持って聞いてくれるのだろうと自問自答していた頃でした。頂戴したお話がまさに学習の動機づけにピッタリのテーマでしたので、何か形にできたら良いなと前向きに考えられたと思います。

田中
私も数学が苦手な学生にどう国際経済学を教えるか工夫しながら授業準備しているところでしたので、伊藤さんと同じく前向きに検討をすすめました。

y-knotシリーズのコンセプトは「社会とつながる」です。
伊藤
社会とつながる点はまさに授業をしていて日頃から意識していた点でした。学生の多くは必ずしもこの分野の研究者を目指すわけではないので、社会に出てどのような点が役に立つのかという視点が学びの動機づけにおいては重要なのだろうと思います。その点、経済学では抽象化だったり一般化したりして問題の本質を捉えようとしますので、どうしても社会との接点が見えづらくなってしまうのかもしれません。

田中
伊藤さんがおっしゃるように、私も抽象的な理論をどう学生に伝える常々考えていました。ちょうど企画がはじまったすぐあとに、パンデミックがはじまり、一層どうこの本を社会とつなげるのか、考えるようになりました。

伊藤
抽象化は、経済学を学ぶ上で目的地にたどり着く地図のような役割を果たしてくれて決して悪くはないのですが、田中さんのおっしゃるように現実世界であまりに多くの経済ショックが立て続けに起こるので、国際経済学に限らず経済学がどのように役に立つのか社会の要請が強まっているという点でも、社会とつながることを意識せずにはいられないですね。

田中
そもそも国際経済学の理論は、その誕生のときから、つまりリカードの比較優位論が出てきたころから、穀物法という政策問題を議論するために生まれたという経緯がありますよね。

伊藤
リカードは保護貿易政策だった穀物法の廃止と自由貿易を訴えましたね。自由貿易か保護貿易かという議論も世間ではTPP加盟時やトランプ関税などの際に大きな議論になりましたが、一九世紀の頃から議論されてきたいわば古くて新しいテーマですし、先人たちも現実とのつながりから研究を発展させてきましたね。

「社会とつながる」を具体的に実現するために工夫された点は?
伊藤
なるべく現実の事例や身近な製品やサービス、それも最近ニュースなどで取り上げられたような事例を固有名詞もそのまま使い、理論的に説明しようと試みました。やはり講義をしていても現実の事例を出すとわかりやすいという反応を得ていたからです。
田中
伊藤さんがおっしゃったことに加えて、具体的な数値例を使って、理論を説明しようと試みました。ただ、理論と整合的な数値例を編み出すのは本当に大変で、苦労しましたので、不完全な部分も残されているかなと思います。

一章構成についてはいかがでしょうか。
伊藤
現実から学ぶという点で、第1部では、統計データを用いた説明や、実在する国や企業、製品の事例を国際経済学の枠組みの中で紹介することで社会とのつながりを意識しました。特にデータを多用した点は、経済のデジタル化でデータを使う場面が増えてきていますので、少しでもデータに慣れ親しんでほしいという狙いもあります。

田中
そうですね、普通の教科書だと、第4章のリカードが最初にきますよね。

―類書との違いについて教えてください。
伊藤
第I部はミクロ経済子などの経済学の知識を必ずしも必要としないので、国際経済学の門戸をたたくという意味で導入としても使ってもらえるよう工夫しましたし、本格的に学ぶという点で第II部からは、田中さんご指摘のように他のテキストと同様に貿易理論の説明を章立てて説明しています。ここでは現実の事例を用いているという点で差別化を試みました。また、自分で分析もできるようにデータや実証方法についても紹介できた点は新しいと思います。
田中
データ分析という点で、重力方程式はこれまでの教科書では必ずしも十分に扱われていませんでしたが、研究の世界では政策の効果を分析するのに使われたり、貿易の構造を理解するために使われたりと、重宝されています。そのため、本文だけではなく補論でも重力方程式について説明しました。ウェブサポート(補論政策編)も参考にしていただければ幸いです。また、グローバル化の揺り戻しの一つの要因ともいえる格差の問題について、第5章や第11章で、国際経済学者がどう向き合ってきたのかも解説しました。この点もほかの教科書との違いだと思います。

伊藤
そうですね、先に触れた保護主義についても、第2章ではその要因を既存のテキストよりも紙面を割いて紹介し、最近の経済安全保障をめぐる国産化の動きや新興国を中心としたデジタル保護主義まで取り上げました。これらの重要なイシューに焦点を当てている点も本書のユニークさが伝わる部分かと思います。

本書を使って講義をする場合、どのような使い方が考えられますか?伊藤大人数でも少人数授業でも扱える設計になっているかと思います。ゼミなどの少人数授業ではぜひ各章末の考える課題について議論してほしいですね。第4章以降はある程度のミクロ経済学の素養が必要になりますので、場合によると部分均衡一般均衡分析の予習復習が必要になろうかと思います。

田中
私は私立文系でずっと教えてきましたが、このテキストは数学がかならずしも得意ではない学生がいる授業でも、伊藤さんがおっしゃるような形で使いやすくなっていると思います。伊藤補論で統計ソフトStataを使った実証方法も紹介しているので、分析課題を通じてデータ分析実習も可能だと思います。学生の皆さんにはぜひ自分でデータを集めて、重力方程式の応用にチャレンジしてほしいです。

最後に一言お願いいたします。
伊藤
既存のテキストを大いに参考にしつつ、個別具体的な事例を引き合いに出すことで「国際経済学ってこんなにおもしろいんだ、役に立つんだ」という共感を持ってもらって学習の動機づけになるように工夫しました。読んでいて楽しいと感じてもらえて、ゆくゆくはその中から研究者を目指してみようと思う学生も出てくるといいなと思っています。

田中
伊藤さんがおっしゃるように、既存のテキストから私もずいぶん勉強してきました。日本は国際経済学のテキストがとても多いと思います。日本のテキストは、アメリカのテキストに比べ、コンパクトで、わかりやすいという特徴があります。私たちのテキストもそうした伝統を引き継げていたらと思います。また、私たちのテキストの豊富な具体例で国際経済学の魅力に気付いていただき、読者の方がより本格的なテキストへ進んでいただけたらと願っています。

 

 

 

クルーグマン国際経済学 理論と政策

 

 

クルーグマン国際経済学 理論と政策

 

 

国際経済学15講

 

 

国際経済学15講

 

 

国際経済学入門 (経済学叢書 Introductory )

 

国際経済学入門 (経済学叢書 Introductory )

 

 

 

入門 国際経済学(中央経済社)

 

 

入門 国際経済学(中央経済社)

 

 

 

実証から学ぶ国際経済

 

 

実証から学ぶ国際経済

 

国際経済学入門(文眞堂)

 

国際経済学入門(文眞堂)

国際経済学 (有斐閣アルマ)

 

 

国際経済学 (有斐閣アルマ)

 

 

演習で学ぶ 国際経済学へのいざない

 

 

演習で学ぶ 国際経済学へのいざない

【はじめにを確認する】

はじめに

教科書を読んでわかったと思ったのに、練習問題が解けないという人がいます。そうしたお悩みに応えて、問題を解きながら国際経済学を学べるように書かれたものが本書です。通常、練習問題は大事なポイントが凝縮されています。本書では、実際にどうやって問題を解いたらよいかについて学ぶことを目標として、基礎的なエッセンスだけを抽出しています。

 

本書の執筆に至ったもう1つの理由は、手っ取り早く国際経済学の大枠を学習したいという要望からです。できるだけページ数を増やさず、必要最低限の内容を網羅しながら、単なる定理などの羅列にとどまらず、きちんと考え方まで学べる内容を目指しています。

 

本書には、いくつかの特徴があります。

まず、初学者や経済学を専門としない人が学習するときにもつまずかないような工夫です。とくに、これまでジョンズ・ホプキンス大学、ニューヨーク市立大学、ピッツバーグ大学や青山学院大学で行った講義で寄せられた素朴な疑問を反映させ、ピンとこないとされるところを丁寧に解説しています。このため、場合によっては、厳密な言い回しを犠牲にしてでも、読者がイメージをもてるような記述を心がけました。

 

また、各章の最後に、参考となる教科書の該当箇所を教科書ガイドとして示してあります。こうした教科書と併用して学習されると、理解度がより深まるでしょう。紙幅の都合上、本書では触れられていない内容なども、そうした書籍で補完することができます。

 

さらに本書には、国際経済学で使用されるミクロ経済学の基礎理論やゲーム理論などの内容も含んでいます。公務員試験や公認会計士などの資格試験から経済学検定試験や学校の期末試験など、幅広く活用していただければと思います。

 

独特の思考体系を持つ経済学は、そうした考え方に不慣れな初学者にとっては少し敷居の高い学問です。しかし、慣れてしまえばそれほど難しいものではありません。本書が経済学を学ぶ方々に寄り添って、その手助けになればと願っています。最後に、図表の作成を手伝っていただいたアシスタントの張嘉さんと、本書の内容を丁寧にチェックしていただいた編集部の吉田素規さんにお礼を申し上げます。では、まえがきもコンパクトにして、さっそく学習を始めましょう!

 

 

第1章

リカードモデルと比較優位

目的

比較優位と絶対優位について学習します。よく質問がある両者の違いについて、数値例を使いながら学びましょう。

技術的に優れている国が、技術的に劣っている国と貿易をするメリットがあるのでしょうか?技術的に優れているのであれば、すべての生産を国内で行ったらよいと思うかもしれません。しかし、国内の資源量(たとえば、各国にいる労働者の数は限られています。

 

国際経済学では、限られた資源を有効に使うには、すべてを自国だけで行うよりも、他国と協力した方がよいことが知られています。本章では、リカード・モデルと呼ばれるものを紹介しながら、こうした考え方の基礎である比較優位の概念について学習します。

 

リカードモデルでは、優れた技術とは高い労働生産性で表されます。たとえば、日本は車を1台生産するのに労働者が6人必要ですが、アメリカは労働者2人で十分だとします。アメリカは少ない人数で車を生産できる(アメリカの労働生産性は高い)ので、アメリカの生産技術の方が高いといえます。同様に、日本はりんごを1kg生産するのに労働者が8人必要ですが、アメリカは労働者4人で十分だとします。アメリカは少ない人数でりんごを生産できるので、やはりアメリカの生産技術の方が高いといえます。こうした状況を、アメリカは、車とりんごの両方の財の生産において絶対優位にあるといいます。

 

このようにアメリカが日本よりも技術的に優れているとしても、貿易するとメリットがあります。そのときに使われるのが比較優位という考え方です。たとえば、アメリカは、日本よりも相対的に車の生産の方が得意というように考えます。一方、日本は、アメリカよりも相対的にりんごの生産の方が得意とします。お互いに協力するのであれば、比較的どちらの生産に向いているかを表すのが比較優位です(実際にどのようにして比較優位を見つけるかは、本章の演習問題で学びます)。

 

では、技術的に優れている国がそうでない国と貿易をすることで恩恵を享受するのはなぜでしょうか?それぞれの国が相対的に得意なものを生産した方が、貿易がないときよりも世界全体での生産量は増えます。増えた生産物を貿易によって山分けすれば、より多くのものを消費できるようになるのです。このため、貿易をしない(自給自足)よりも、貿易を行った方がよいことになります。