【京都大学公共政策大学院】2022年度院試試験 – 解答、経済政策問1

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問1

(1)

カーボンプライシングとは,気候変動問題の主因である炭素に価格を付ける仕組みのことです.企業が炭素を排出する財を生産している場合,排出された財(炭素)は地球環境に負の外部性を与えます.しかし,従来は炭素を扱う市場がなかったために,企業は炭素による負の外部性を考慮せず,社会的に望ましい生産量よりも過大に炭素を排出してきました.ただ,実際には炭素の排出量を正確に把握することは難しいです.そのため,政府は炭素を排出する行為(燃料・電気の利用)自体に税をかけることで,負の外部性を生み出す炭素の排出を抑えようとしています.

 

(2)

カーボンプライシングは公共経済学の分野である,ピグー税によって根拠づけられています.ピグー税とは,負の外部性を生み出す財を生産している企業に,1財生産することで与えられる負の外部性の分だけ課税をすることで,経済厚生上最適な水準に生産量を調整しようとするものです.炭素の排出は,地球温暖化等,地球全体に負の外部性をもたらします.そのため,炭素の排出に税を課すことで,企業の費用は上がり結果として財の生産量は減少します.

 

(3)

カーボンプライシングによる炭素の排出への課税が高すぎると,経済厚生上最適な水準よりも過小な生産量になってしまいます.産業規模の大きいエネルギー業界において,過小な生産量は経済成長の遅れに繋がってしまいます.よってどの程度の課税が必要なのかをしっかりと検討する必要です.炭素の排出が与える負の外部性を推計するためには,炭素排出1トンにつきどれだけの負の外部性を生み出すかを推定します.税収の使途としては地球温暖化対策の予算としてさらなる環境保全に取り組む必要がでてきます.