【東京大学公共政策大学院】2020年度院試試験の解答(経済学/マクロ/問題2)

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問題2

(1)消費に関する恒常所得仮説とは,現在の消費が,現在から将来にかけての生涯所得(恒常所得)によって決まるとするものである.仮説が成立するために必要な条件は,流動性制約がないことである.流動性制約が消費に与える影響を考えます.

 

経済は0期に始まるとします.家計Aは,0期初の金融資産も,労働所得も0とする.($a_0=0,w_0=0$)しかし,1期以降は,年525年万円の労働所得を得るとします.実質利子率は年5%の要求利回りに等しいとします.

この場合,家計Aの1期時点の生涯所得(労働所得の割引現在価値の総和で表される)は,1億500万円に等しい(525/0.05=10500).1期時点で1億500万円の生涯所得を5\%の割引率で0期時点に割り戻すと,1億円に等しくなります(10500/(1+0.05)=10000).

つまり,家計Aの0期時点の生涯所得は1億円です.したがって,恒常所得仮説が妥当すると,0期の消費($c_0$)は,1億円の生涯所得に5\%の要求利回りをかけた500万円に等しくなります.家計Aは,0期の時点で金融資産も労働資産もないので,金利\%で500万円を借りないと0期に500万円の消費を実現することができません.つまり,流動性制約があり借入が十分にできない場合,消費の平滑化が妨げられてしまいます.

(2)恒常所得仮説が成立しているとき,家計は適切な借入によって消費を平滑化している為,前年の消費額と今年の消費額は等しいです.また,恒常所得仮説では,限界消費性向が内生変数であると仮定しています.計量経済学的な手法としては,消費を非説明変数とし,労働所得増の持続期間を説明変数の一つとして加えて,OLS,VAR推定などがあります.