【計量経済学と統計学の違い 】目的や手法、具体例についても解説!

 

 

 

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計量経済学と統計学の違いについて

計量経済学と統計学は、両者ともにデータを解析するための手法や理論を提供する学問分野ですが、その目的やアプローチには大きな違いがあります。統計学は、実験結果を解釈するための学問として位置づけられ、限られたデータから背後にあるメカニズムを探ることを主な目的としています。

特に、物理学や生物学などの実験科学で得られるデータの解析に適しています。一方、計量経済学は、経済学の理論と現実の経済データを結びつけることを目的としており、経済現象を理解し、予測や制御を行うための手法を提供します。経済の現象は実験が難しいため、観測データをもとに解析するアプローチが特徴的です。

 

 

計量経済学の主な目的は、二つの事柄の因果関係、例えば「職業プログラムと所得」、「災害→経済成長」のような関係を明らかにすることです。このため、回帰モデルなどのツールが頻繁に使用されます。計量経済学は、研究者が具体的に調べたい事柄を明確に持っていることが前提となっており、その目的を達成するために確率統計を活用します。

計量経済学は、経済学の理論と現実の経済データの橋渡しをする役割を果たし、理論が現実の動きをどのように説明しているか、また、現在の理論でどの部分が説明できていないかを明らかにする学問です。具体的には、計量経済学は経済現象に関するモデルを数学的に特定化し、関連するデータを収集してモデルの係数を推定します。

その後、推定結果の検定やモデルの検定を行い、計量経済モデルを用いて経済政策の効果の測定や予測を行います。このプロセスを通じて、経済の動きを把握し、予測や制御を行うことが計量経済学の主な目標となります。

 

 

1. 定義:
– 計量経済学: 経済学の理論と統計学の手法を融合させた学問。具体的には、経済的な現象や政策の効果を数値的、定量的に分析することを目的としている。
– 統計学: データの収集から解釈、そして表示までの一連の流れを研究する学問。これには、さまざまなデータの特性やパターンを明らかにする技術が含まれる。

 

 

2. 目的:
– 計量経済学: 経済理論の検証や、特定の因果関係を推定すること。これにより、経済的な現象の背後にあるメカニズムを理解し、有効な政策提案を行うことが可能。
– 統計学: データの背後に隠れた特性やパターンを明らかにすること。これにより、データの傾向を正確に捉え、未来の予測や仮説の検証を行うことができる。

 

 

3. 応用:
– 計量経済学: 経済理論の仮説をデータを用いて検証することや、政策の効果を評価すること、さらには経済動向を予測することなどに応用される。
– 統計学: データの解析や未来の予測、そして仮説の検定など、幅広い分野での応用が考えられる。

 

4. 経済理論に対する位置付け:
– 計量経済学: 経済理論を基盤としており、その理論をデータを通じて検証する。
– 統計学: 特定の経済理論に基づくことなく、データそのものの特性やパターンを研究する学問。

 

計量経済学と経済理論

・消費関数:

消費関数は、所得と消費の関係を示す理論です。例えば、ケインズの消費関数では、所得が増加すると消費も増加するが、所得の増加分全てが消費に回るわけではないとされています。計量経済学では、このような消費の動機や所得の変動が消費にどのように影響するかをデータを基に検証します。

 

・需要の価格弾力性:

価格弾力性は、商品の価格が変動したときの需要量の変動の度合いを示す指標です。計量経済学では、実際のデータを用いて、特定の商品やサービスの価格弾力性を推定します。これにより、価格の変動が需要にどれだけの影響を与えるかを定量的に評価することができます。

 

・人的資本理論:

人的資本理論は、教育や研修などの投資が個人の将来の所得や生産性に与える影響を考察する理論です。計量経済学では、教育年数や研修の受講経験などのデータを用いて、人的資本の投資が労働市場の結果にどのように影響するかを検証します。

 

・重力(グラビティ)モデル:

グラビティモデルは、二国間の貿易量を、両国の経済規模と距離に基づいて説明するモデルです。具体的には、大きな経済規模を持つ国同士や、地理的に近い国同士の貿易量が多くなると予測されます。計量経済学では、実際の貿易データを用いて、このモデルの適用性や各変数の影響度合いを検証します。

 

計量経済学と因果推論

計量経済学における因果関係の検証手法のやり方があります。下記が主なやり方になります。

・RCT (Randomized Controlled Trial) – ランダム化比較試験:

– 説明: ランダムに処置群と対照群に分け、処置の効果を評価する手法。ランダムにグループを分けることで、他の要因の影響を排除し、処置の純粋な効果を測定することができる。
– 具体例: 新しい教育プログラムの効果を評価するため、学生をランダムに2つのグループに分け、一方のグループだけに新しいプログラムを導入。その後、2つのグループの学力の変化を比較する。

 

 

・DID (Difference-in-Differences) – 差の差法:

– 説明: 時間とグループの差の差を利用して介入の効果を推定する手法。介入前後の変化を2つのグループで比較し、その差の差から介入の効果を推定する。
– 具体例: ある地域での禁煙キャンペーンの効果を評価するため、キャンペーンを実施した地域と実施していない地域の喫煙率の変化を比較する。

 

 

・IV (Instrumental Variable) – 手段変数法:

– 説明: 外部の変数を利用して因果関係を推定する手法。観測されない要因の影響を排除するために、関連するが直接的な影響を持たない外部の変数を利用する。
– 具体例: 教育年数と所得の関係を調査する際、教育年数の選択に関連する要因を排除するために、生まれた地域の教育施設の数や距離を手段変数として使用する。

 

 

・RDD (Regression Discontinuity Design) – 回帰不連続デザイン:

– 説明: ある閾値を基にして、その閾値の前後での変化を利用して因果関係を推定する手法。閾値を基にした処置の効果を、閾値のすぐ上とすぐ下での変化から推定する。
– 具体例: 奨学金の受給資格が一定の試験スコアに基づいている場合、そのスコアのすぐ上とすぐ下の学生の後の学業成果を比較して、奨学金の効果を評価する。

 

計量経済学の構造推定について

また計量経済学の中に構造推定というものもあります。これは、経済理論に基づくモデルのパラメータを推定する方法です。これは、経済現象の背後にある「構造的な」関係やメカニズムを理解し、予測することを目的としています。構造モデルは、経済的な意思決定の過程や市場の均衡条件など、経済理論に基づいて形成されるため、そのパラメータの推定は、政策変更や異なる状況下での経済の反応を予測する上で非常に有用です。

 

例1: 合併の効果は需要次第:消費者需要モデルの推定

企業の合併は市場の競争構造を変える可能性があり、その効果は消費者の需要に大きく依存します。構造推定を用いて消費者の需要モデルを推定することで、特定の商品やサービスに対する消費者の価値評価や代替商品との関係を明らかにすることができます。これにより、合併後の価格や商品の供給量がどのように変動するか、消費者の福祉にどのような影響を与えるかを予測することができます。

 

例2: 参入ゲームの推定

市場への新規参入は、既存の企業や消費者にさまざまな影響を与えます。参入ゲームの構造推定では、企業が市場に参入する際の利益やコスト、競争相手の戦略などを考慮して、参入の決定をモデル化します。これにより、市場の特性や規模、参入障壁の高さなどが参入の決定にどのように影響するかを理解することができます。

 

例3: 出店戦略モデルの性質を見極める:動学ゲームの推定

企業が新しい店舗を出店する際の戦略は、過去の経験や将来の予測に基づいて決定されます。動学ゲームの構造推定を用いることで、企業が出店の決定を行う際の期待利益や競争相手の戦略、市場の成長予測などを考慮したモデルを構築することができます。これにより、特定の地域や市場での出店のタイミングや規模、店舗の特性などがどのように決定されるかを理解することができます。