大学院経済学研究科を考えたのはいつ?
大学受験で経済学部を選んだ中でも、経済学の大学院に進もうと大学受験時に考えていた学生は、おそらく自然科学に進んだ学生より多くはないかと思います。
我々の周りにも4年生になり進路を考えた上で消去法で経済学研究科の修士課程に入ったものもいますし、2年生あたりから目指していた人もいます。ただ大学に入った時点で経済学の大学院を目指そうと考えているものは見当たりません。
おそらくですが経済学のイメージをそこまでまだ掴めていないというのも影響しているかと思います。たまたま経済学をそこまで知らずに経済学部に受かって進学し、数学も受験科目でなかった私立大であったため、微分積分も理解していないまま授業に苦しんでいたのに、経済学の分野に興味を持ち途中から院を考え進んだメンバーもいます。
やはり、ここで大きいのは経済学としての学問の考え方が良かった、自分に合っていたというが院進を決めたのが大きかったのではと思います。他学部からでの経済学研究科への院進を決める方もたまたま経済学の授業を取ったら面白さが分かって院進を考えたという人も多いように思います。
もちろん決まったらそこから対策なども始められますが、それに関しては各人がきっかけが違うのであって気にせず、自分が興味を持ったところから大学院のことを調べてみるのが良いでしょう。社会人になられた方でも数年職務経験後に院に進む方もいますし10年以上働いてから院に行かれた方もいましたし、いつでも学問は開かれています。
経済学研究科修士過程の学びは就職等に役立つ?
ここでは個別のケースは全て書ききれませんが、大学研究者を目指す場合に必要な博士課程進学へのケースででなく、修士課程後の就職について書きたいと思います。
経済学研究科での修士卒での就職の場合は、ダイレクトで経済学を使う分野は多くありませんので基本的に民間での様々な業界、業種が考えられます。
経済学研究科修士大学院のメリット
経済学研究科の修士課程では、学部レベルよりも高度で専門的な経済理論や分析手法を体系的に学ぶことができます。特に1年目のコースワーク期間は非常に濃密で、ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学を徹底的に学習します。
2年目は修士論文の執筆を中心に、自分の専門性を深めていく期間になります。文献の精読や専門分野の関連授業の履修を通じて、自分が興味を持つ分野を明確に定めることができます。また、教員や同期との議論を通じて視野を広げ、論理的な思考力や問題解決能力を磨くことができます。こうして培った知識や分析能力は、卒業後に経済学分野以外の業界に進んでも、ビジネスシーンや政策提言などで大いに役立つでしょう。
一方で、1年目のコースワークでは毎日の予習・復習、課題提出やテストが頻繁にあり、学習量の多さが大きな負担となることがあります。また、学業に集中するあまり就職活動やインターンシップなど、卒業後のキャリア形成のための活動に十分な時間を割くことが難しくなるというデメリットもあります。しかし、この密度の高い学習経験そのものが、将来的なキャリアの発展にとって有益な基盤となるでしょう。
経済学研究科修士卒の就職先
あくまで一例です。下記以外でも多くの業界での可能性があります。
経済学研究科の修士課程修了者の就職先としては、金融業界やコンサルティング業界、官公庁、総合商社、IT企業があります。金融分野では、投資銀行や資産運用会社のほか、政府系金融機関があり、高度な経済分析能力や金融知識を生かせるため、多くの修士修了者が志望しています。また、戦略系や総合系のコンサルティングファーム、シンクタンク、総研系企業なども人気が高く、専門性を活用して企業や政策課題へのコンサルティングや分析業務に携わっています。
官公庁・政府機関では財務省や経済産業省、総務省といった中央省庁をはじめ、国税庁や公正取引委員会、日本銀行、金融庁、地方自治体なども有力な就職先です。さらに、総合商社も幅広い知識をグローバルなビジネスの現場で生かせることから、人気の就職先となっています。近年では、IT・インターネット業界の経済分析・データサイエンス部門においても経済学修士の需要が増えており、統計解析やビッグデータ分析スキルを生かして活躍する修了者も増加しています。また国際機関だと修士卒が前提でこのような国際機関にも可能性があります。
金融:
投資銀行、資産運用会社、政府系金融機関など
経済学研究科修士を出て、金融機関への就職は多いです。ただし金融機関といえ、経済学の知識を使うことは少ないです。それでも修士卒であれば、リサーチ部門や経済調査部、リスク管理、資産運用、商品開発といった専門的な部署に配属されるケースもあります。また、中央銀行や政策系のシンクタンク、政府系金融機関に進む道もあります。
コンサル、シンクタンク:
戦略系コンサルティングファーム、総合系コンサルティングファーム、シンクタンク、総研系なども考えられます。
コンサルも経済学の大学院から進む方も多いです。ジャーナルに投稿するような論文でなく、レポートなどが中心であったり、企業のコンサルでは経済学で学んだロジックだったりを部分的に活かせる職種でもあるかと思います。
データ分析、問題解決、論理的思考などの重要なスキルを磨いたスキルは、企業の戦略立案や運営改善などのコンサルタント業務において非常に価値があります。
コンサルティング業界では、さまざまな業界や企業の問題に対応する必要があるため、広範な知識が役立ちます。例えば、企業の成長戦略の策定、コスト削減の提案、新市場への進出戦略など、多岐にわたる問題解決に経済学の理論が適用されます。
シンクタンクも院卒も元々多いですし、全部の経済学分野ではありませんが場合によっては大学院の延長でのような、調査したり、分析したりの仕事を行えます。シンクタンクで仕事をしながら博士課程も目指される方も多いです。もちろん分析をしたものをジャーナルに載せたりもしますが、一般向けのレポートなども書いていきます。
ITテック企業:
また、最近ですとIT企業における経済学を学んでいた修士卒は評価されることは多いです。
近年、経済学研究科出身者がデータサイエンスやAI関連の職種に進むケースも増えていますし、経済学の分野で習得する統計・計量分析のスキルは、機械学習やビッグデータ解析とも親和性が高く、特にPythonやRなどのプログラミングを学んでいると有利です。
IT企業では、マーケット分析、アルゴリズム開発、リスク管理、価格戦略の最適化などの分野で、経済学の知識が活かされます。また、フィンテック企業やスタートアップにおいても、経済学的な視点を活かしてビジネスの意思決定に貢献することが可能です。
・因果関係の理解とデータ分析能力: テック企業が直面する多くのビジネス課題に対して、因果関係を理解し、データ分析スキルを活用できる。テック企業は多くのデータを持ち、実験が可能なため、因果関係を把握することが重要。経済学者はデータを分析し、例えば新機能導入がユーザーベースの成長にどのように影響するかなどの重要な問題に対する答えを見つけられる。
・市場設計とインセンティブ設計: オンラインマーケットプレイスや広告オークションなどのデジタル経済における市場設計とインセンティブ設計に関する専門知識を提供できる。テック企業は市場の設計やインセンティブ構造について考え、経済学者はその設計を最適化し、収益を最大化するのに役立つ。
・データ戦略の最適化: データはテック企業にとって戦略的な資産であり、経済学者はデータの価値を評価し、競争戦略にどのように影響するかを分析。また、データの取得、保持、販売に関する意思決定をサポートし、新しいビジネス機会を特定する。
なども行えます。
国際機関:
国際機関などへの就職も考えられます。国際機関では、政策立案、開発支援、経済研究、国際協力などの分野での専門知識が求められます。経済学修士の学びですと世界銀行グループであったり他の分析をよりするポジションですと経済学修士課程で磨かれる統計学や計量経済学の知識なども役立てられます。
もちろん経済学研究科修士過程の学びの後、上記以外での業界で多くの方が就職をされています。その場合でも分析能力、そしてデータ処理の技術が直接的に活用されることが多いでしょう。
より今後は特に因果関係の理解、市場設計、インセンティブ設計、産業構造と競争力の理解、社会への影響評価などに密接した仕事もでてくる可能性もあり、経済学の修士課程は、単に学問的な追求だけでなく、実践的なビジネスシーンでの応用にも大いに貢献することができると言えるでしょう。このように多様なキャリアパスが開けることは、経済学研究科修士過程の学びを選ぶ一つにもなります。