【組織の経済学】おすすめ本(入門,大学学部,大学院での教科書,参考書ランキング)人事経済学も!

 

組織の経済学を学ぼう

組織の経済学は、組織がどのように機能し、内部および外部の要因にどのように反応するかを理解するための学問分野です。この分野は、経済理論と経営学の要素を組み合わせ、組織内の意思決定、構造、戦略、およびパフォーマンスを分析します。以下は、組織の経済学の主要な概念の概要です。

  • エージェンシー理論: この理論は、組織内の異なる利害関係者(例えば、経営者と株主)間の関係を考察します。エージェント(従業員や経営者)が、プリンシパル(株主やオーナー)の最善の利益に沿って行動するようにどのように動機付けるかに焦点を当てています。
  • トランザクションコスト理論: この理論は、取引を行う際のコスト、特に市場と組織内の取引の間のコストの違いを分析します。トランザクションコストが高い場合、企業はその活動を内部化する傾向があります(例:垂直統合)。
  • 制度経済学: 制度(法律、規制、文化など)が組織の行動や経済活動にどのように影響を与えるかを研究します。組織は、これらの外部の制約の中で最善の戦略を見つけようとします。
  • 資源ベースの視点: このアプローチは、組織がどのように独自の内部資源(スキル、知識、能力など)を利用して競争上の優位性を築くかを考察します。資源が貴重で、模倣が難しい場合、組織は競争優位を獲得できます。
  • 行動経済学と組織: 行動経済学の原則を適用して、組織内の個人の非合理的な行動やバイアスが組織の意思決定にどのように影響するかを理解します。
  • 戦略的組織設計: 組織がその構造(例えば、集権化対分権化、機能的対事業部門構造)をどのように選択し、それが効率性やイノベーションにどのように影響するかを分析します。

組織の経済学は、組織が複雑な環境でどのように生き残り、繁栄するかを理解するための強力なツールを提供します。それは、組織の内部プロセスと外部環境との相互作用に注目し、より効果的な組織戦略と政策の策定に役立ちます。

 

 

産業組織論との関係

 

組織の経済学と産業組織論は、両者が企業や市場の挙動を解析するという点で密接に関連していますが、焦点とアプローチにおいて異なる側面があります。以下に、それぞれの分野の特徴と、その関連性および重複する点について説明します。

組織の経済学

組織の経済学は、主に個々の企業やその他の組織の内部構造と運営に焦点を当てた分野です。この分野では、以下のような要素が重要です。

  • 内部意思決定プロセス: 組織内の意思決定方法や、組織構造がどのように効率性やパフォーマンスに影響するか。
  • エージェンシー問題: 組織内の異なる利害関係者(例えば、経営者と株主)間の目標の不一致とそれに伴う問題。
  • 組織設計: 効率的な組織構造の設計、組織文化の形成、インセンティブの配置など。

産業組織論

一方、産業組織論は市場構造、企業間競争、市場パフォーマンスに焦点を当てています。この分野の主な関心事は以下の通りです。

  • 市場構造: 産業内の競争レベル、市場支配力、市場の障壁など。
  • 企業戦略: 競争優位を確保するための企業の戦略、価格設定、製品差別化など。
  • 市場の効率性: 産業内の競争が消費者福祉や革新にどのように影響するか。

関連性と重複

  • 市場と組織の相互作用: 産業組織論は市場レベルでの競争を分析し、組織の経済学はそのような市場の圧力が企業内の意思決定や構造にどのように影響するかを考察します。
  • 戦略的決定: 両分野は、企業の戦略的決定(例えば、価格設定、製品開発、市場進出戦略)に関わる側面があります。
  • 効率性とパフォーマンス: 組織の内部効率性と市場でのパフォーマンスは、組織の経済学と産業組織論の両方で重要なテーマです。

 

新制度派経済学と組織の経済学

新制度派経済学(New Institutional Economics)と組織の経済学(Economics of Organization)は、似ている部分などがあります。

  • 新制度派経済学は、経済活動における制度の役割と影響に焦点を当てた経済学の一分野です。制度とは、法律、規範、慣習など、人々の行動を形成し、制約する社会的なルールや枠組みのことを指します。この学問は、市場や企業内での意思決定、取引コスト、所有権の構造、契約、政治経済学など、幅広いトピックを扱います。
  • 組織の経済学は、企業やその他の組織内での意思決定、組織構造、インセンティブ、組織間の関係などに重点を置く経済学の分野です。ここでは、どのように組織が最適な意思決定を行い、効率を最大化するか、また組織内の様々な利害関係者間の相互作用がどのように機能するかが研究されます。

これら二つの学問領域は、経済活動における制度や組織の役割について共通の関心を持っていますが、アプローチや研究の重点が異なります。新制度派経済学はより広い範囲の制度的枠組みに注目し、組織の経済学は特に組織内部や組織間のダイナミクスに焦点を当てています。

 

 

 

組織の経済学の書籍ランキング

 

1 . 組織の経済学(ミルグロム,ロバーツ)
2 . 組織の経済学(伊藤,小林,宮原)
3 . 組織の経済学入門
4 . 組織の経済学入門
5 . 組織の経済学のフロンティアと日本の企業組織
6 . 業界分析 組織の経済学―新制度派経済学の応用
7 . 組織と制度のミクロ経済学
8 . 企業の経済学 産業組織論入門
9 . 産業組織とビジネスの経済学
10 . 経営戦略の経済学
11 . 人事と組織の経済学・実践編
12 . 日本の会社のための人事の経済学

書籍の概要

組織の経済学(ミルグロム,ロバーツ)

 

内容については、「補完性」をキーワードに、企業組織とそれをとりまく制度をシステムとして考察する経済学と経営学の独創的なブレークスルーであり、世界中のMBAで広く読み継がれている比較制度分析、企業理論のロングセラーと紹介されています。

本書が非常に理論的で論理的な厳密さを持っており、経済学の中でも特に新制度派の最先端の理論を取り入れている点が強調されています。読者は、市場のみに任せるのでも、中央集権的な管理体制の下で運営するのでもなく、資源配分を効率化するための適切なコーディネーションと制度設計に関するヒントを得ることができます。

また、この本は企業理論・組織論の経済学的な標準教科書として位置づけられており、企業の組織制度を経済学的に分析する上で大変参考になるとの評価もあります。

筆者のミルグロム氏はスタンフォード大学経済学部教授で、オークションの理論的発展や実用化への貢献により2020年にノーベル経済学賞を受賞しており、ロバーツ氏はスタンフォード大学ビジネス・スクール教授で、1945年カナダ、ウィニベグ生まれです。奥野正寛氏、伊藤秀史氏らによって翻訳されました。

企業組織とその周辺の制度を深く理解するために、経済学と経営学の両方の観点からアプローチしています。理論的でありながら、実際の組織設計や人事制度に直結する知見を提供しており、経済学の学生だけでなく、ビジネスの実務家にも価値ある洞察を与えるでしょう。

 

 

 

 

組織の経済学(伊藤,小林,宮原)

 

 

『組織の経済学』は、伊藤秀史氏、小林創氏、宮原泰之氏によって共著された本です。この本は、企業組織の理解に必要なトピックを包括的に扱い、組織の問題がどのようなメカニズムで発生するのか、問題解決のために組織をどう設計すべきか、組織内部の特徴がどのような違いによって生じるのかを、事例を交えながら解説しています。

本書は大きく3部に分けられています。第1部では、組織で起きる問題の種類、第2部ではそれらの問題の解決方法、第3部では組織間の違いが何から生じるのかを掘り下げています。各章では、イントロダクション、組織におけるジレンマ、コーディネーション問題、信頼の形成などのトピックが扱われています。

企業組織を理解するための本質的な問題を浮き彫りにし、問題解決のための分析道具を提供することを目的とした、日本発の体系的テキストです。理論的に組織の問題を解き明かし、組織設計、プリンシパル=エージェント関係、長期的関係、関係的契約、戦略的情報伝達などの概念を詳細に説明しています。

 

 

 

組織の経済学入門

 

『組織の経済学入門』は、S.ダウマ氏とH.スクルーダー氏によって著され、丹沢安治氏、岡田和秀氏、渡部直樹氏、菊澤研宗氏、久保知一氏、石川伊吹氏、北島啓嗣氏によって翻訳されました。この本は組織に対する経済学的アプローチを導入し、経済学的推論を基礎にしながらも、数理的な説明を最小限に抑えているため、一般の学生、企業人、政府関係者にとってもアクセスしやすい内容となっています。第3版では、ゲーム理論、資源基礎アプローチ、コーポレートガバナンスなどのテーマと、多くの事例や演習問題が新たに加えられており、内容が一層充実しています。

組織の経済学に関する導入的なテキストとして位置づけられ、経済学の基本的な概念や理論を活用して組織内の意思決定プロセスや構造を分析する手法を提供しています。学術的な深さと実践的な応用のバランスを取りながら、読者が組織の経済的側面について深い理解を得ることを目指しています。

 

 

組織の経済学入門

 

『組織の経済学入門』の改訂版は、新制度派経済学の全体像を俯瞰することを目的とした入門書です。著者は菊澤研宗氏(慶應義塾大学教授)で、ダイナミック・ケイパビリティ論を中心に内容がアップデートされています。新たに「戦略の経済学」に関する解説が第5章として追加され、発展著しい企業理論を体系的にまとめ、経営への応用を重視しています。

本書は、取引コスト理論、エージェンシー理論、所有権理論の基礎から、戦略的経営の経済学アプローチ、新しい組織の経済学アプローチに至るまで、組織経済学の様々な側面を解説しています。これにより、新制度派経済学の視点から企業や組織を読み解くための理論的基盤を提供しています。

この書籍は、経済学だけでなく、経営学においても応用される理論を学ぶ上で非常に有益なリソースとなります。経営戦略や企業理論に興味がある学生や専門家にとって、基本的な理解を深めるのに適した内容となっています。

 

 

 

組織の経済学のフロンティアと日本の企業組織

 

「組織の経済学のフロンティアと日本の企業組織」は、組織デザインへの応用が期待される理論を体系的に解析したA章と、それを用いて日本企業への事例研究を行ったB章という立体的な構成になっています。理論と実業をつなぐ画期的な専門書として紹介されています。

 

 

 

業界分析 組織の経済学―新制度派経済学の応用

 

 

『業界分析 組織の経済学―新制度派経済学の応用』は、菊澤研宗氏によって編著された本で、経営学や経済学の分野で急速に発展している新制度派経済学、または組織の経済学と呼ばれる新しい理論的アプローチを用いています。このアプローチには、取引コスト理論、エージェンシー理論、所有権理論が含まれており、日本のさまざまな業界の組織や戦略を分析し、業界の特徴や課題を明らかにすることを目的としています。

本書は、以下のような構成で展開されています。

  • 組織戦略の取引コスト理論分析
  • 酒類メーカーの組織戦略をめぐる取引コスト理論分析
  • コンサルティング業界の分析
  • ヘッジファンドのエージェンシー理論分析
  • ベンチャーキャピタルをめぐるエージェンシー理論分析
  • ナレッジ・マネジメントや企業の情報システム化、コーポレート・ガバナンスの所有権理論分析など、最新の動きをめぐる新制度派経済分析

 

組織と制度のミクロ経済学

 

『組織と制度のミクロ経済学』は、堀一三氏、国本隆氏、渡邊直樹氏が編集した専門書です。人々の間で発生する利害対立を調整する組織と、利害対立を抑制するために人々が集団で自らの行動に対して課す制約である制度をミクロ経済学の観点から分析します。具体的には、メカニズムデザインや契約理論、協力ゲーム理論、被験者・計算機実験、構造推定を含む幅広い手法を用いた最新の研究成果を紹介しています。

本書は、序章でミクロ経済学のフロンティアを探求し、その後、制度設計の諸問題、組織の経済学における課題、組織における交渉、そして進化ゲーム、シミュレーション、構造推定といった分析手法に関する章で構成されています。各章では、クリーン開発メカニズムのミクロ・ゲーム分析、ベイジアン遂行理論、市場のミクロ構造理論、契約とサーチ、ホールドアップ問題、協力ゲーム理論、提携ゲーム、事前コミュニケーションによる均衡選択、マッチングゲームの顕示選好分析など、多岐にわたるトピックが扱われています。

組織や制度に関心のある研究者や学生にとって、ミクロ経済学の最前線で使用されている理論や手法を理解するのに役立つ資料となるでしょう。

 

 

企業の経済学 産業組織論入門

 

『企業の経済学 産業組織論入門』はルイシュ・カブラル氏によって著され、青木玲子氏と大橋弘氏によって監修・翻訳された書籍です。この本は、産業組織論を学ぶための課題解決主導型のアプローチを提供し、豊富な事例に基づく解説で、企業の戦略的な行動や競争政策の意義が理解できるように設計されています。定評のあるテキストの邦訳として、企業の行動原理を豊富な事例と実証分析を通じて解明しています。

カブラル氏はニューヨーク大学スターン・ビジネススクールの教授であり、本書はその専門知識を基にしたものです。書籍は大学生及び院生向けに位置づけられており、産業組織論の基本から応用までを網羅しています。内容には、消費者行動の分析から企業戦略、市場の構造と競争政策に至るまでの広範なトピックが含まれています。

経済学を専攻する学生や、産業組織論に興味のある研究者及び実務家にとって、理論と実践の両方を学ぶ上で貴重な資源となるでしょう。

 

 

産業組織とビジネスの経済学

 

『産業組織とビジネスの経済学』は、花薗誠氏(名古屋大学教授)によって著された書籍で、産業組織論やビジネス・エコノミクスを学ぶ初学者に最適な入門書です。この本は、市場の成り立ちや企業の行動原理を体系的に解説し、企業の市場での行動とその社会的な意義をさまざまな視点から分析しています。具体的な事例も豊富に盛り込まれており、理論だけでなく実際のビジネスシーンを理解するのに役立ちます。

内容としては、価格決定の原理、価格差別、垂直的な企業間関係、寡占市場での企業競争、競争政策の基礎、競争緩和のための非価格戦略、価格決定における企業共謀、市場構造の決定要因、市場構造を変更する戦略、研究開発と知的財産権、ネットワーク効果と消費者・企業行動など、広範なトピックを網羅しています。

経済学の観点から企業の行動原理を理解するのに非常に有用で、特に産業組織論を深く学びたい人や、ビジネスの経済的側面に興味がある人にとって重宝される一冊となっています。

 

 

 

 

経営戦略の経済学

 

『新版 経営戦略の経済学』は、淺羽茂氏によって著された専門書で、欧米のMBA流戦略論テキストとしての決定版とされています。この新版では、経営学の分野で議論されてきた経営戦略を経済学の用語や考え方と関連させて解説しており、プラットフォームの戦略についての章が新たに加えられ、ショートケースも新しいものに入れ替えられています。

淺羽茂氏の略歴はカリフォルニア大学ロサンジェルス校からPh.D.を取得しており、早稲田大学大学院経営管理研究科の教授として活躍されています。他の著書には「日本企業の競争原理」などがあります。

この本は、経営戦略を学ぶ学生や専門家にとって、理論と実践の両方を深く理解するのに役立つ内容となっています。特に、経済学の視点から経営戦略を捉え直すことにより、新しい知見やアプローチを提供してくれるでしょう。

 

 

人事と組織の経済学・実践編

 

『人事と組織の経済学・実践編』は、エドワード・P・ラジアー氏とマイケル・ギブス氏によって共著された本で、人事経済学という新しい分野を確立し、学界だけでなく政界からも高い評価を受けたことを受け、本書は一般のビジネスパーソンが十分に理解できるように平易な内容で書かれています。

本書では、希少な人材をどのように採用し、有効に活用するか、採用基準、従業員への投資、経営陣と従業員のコミュニケーション方法など、会社と従業員がWIN-WINの関係になるための合理的な人事戦略を経済学的視点から解説しています。また、社員の採用から教育、解雇、職務設計、昇進システム、人事考課、報酬や社内イノベーションに至るまで、人事関連の様々な問題を経済理論と実際のケーススタディを組み合わせて解説し、合理的な手法を示唆する内容となっています。共著者の一人であるマイケル・ギブス教授はシカゴ大学ビジネススクールの泰斗であり、経営学のアプローチと実際のケーススタディを充実させた内容で、人事分野の総体をまとめて解説したユニークな著作です。

成果主義やインセンティブなどのトピックを扱いつつ、人事分野全体を包括的に解説することにより、既存の経営書とは一線を画しています。経済学やゲーム理論を用いて人事制度の有効性を解説するため、読者は有名企業の組織論を理解する前に、体系的な分析を学ぶことができ、自社の状況にどのように適用できるかを考えることが可能になります。

 

日本の会社のための人事の経済学