自己報告された体重と身長の測定誤差に焦点を当てた経済学研究テーマ

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現代の健康政策の策定において、正確なデータは不可欠です。

例えば、特に、肥満率の正確な把握は公衆衛生において中核的な課題の一つであり、適切な介入戦略や資源の配分に影響を及ぼします。しかし、多くの健康関連データが自己報告に基づいている現状は、このデータの信頼性と精度に疑問を投げかけています。自己報告された体重や身長は、多くの場合、実際の数値から逸脱しており、これが経済モデルや肥満率の推定に誤りをもたらすことが知られています。

この問題に光を当てた先行研究では、自己報告データの測定誤差、その経済的モデルへの影響、そして肥満率推定における誤りの影響が詳細に分析されています。これらの研究成果は、自己報告データの限界を明らかにし、更なる精度向上のための手法開発を促すものであります。

そのため、修士論文のテーマとして「自己報告データの信頼性とその公衆衛生への影響」を選ぶことは、非常に意義深い研究領域であると言えます。

 

具体的には、体重や身長の自己報告がどのように社会的規範や個人の認識に影響されるのか、また、そのようなデータの誤りが健康政策や経済分析にどのような影響を与えるのかを探求することができます。さらに、測定誤差を補正するための新たなアルゴリズムやモデルを開発し、その効果を検証することも、修士論文としての価値を高めるでしょう。

 

経済セミナー編集部 (編集)
出版社:日本評論社、出典;出版社HP

 



References

Courtemanche, C., Pinkston, J. C., & Stewart, J. (2015). Adjusting body mass for measurement error with invalid validation data. Economics & Human Biology, 19, 275-293.

無効な検証データを用いた体重調整方法が経済分析におけるバイアスの原因となる可能性があることを示している。特に、体重と身長の自己報告に含まれる誤差を調整する新しい手法を提案し、その有効性を評価している。

 

O’Neill, D., & Sweetman, O. (2016). Bounding obesity rates in the presence of self-reporting errors. Empirical Economics, 50, 857-871.

自己報告による肥満率の誤差を考慮して、肥満率の上限と下限を推定する方法が提案されている。この研究では、特にヨーロッパの国々とアメリカの州を比較する際に、自己報告データの信頼性がどの程度影響を受けるかを検証している。

 

Cawley, J., Meyerhoefer, C., & Biener, A. (2017). Reporting error in weight and height among older adults: Implications for estimating healthcare costs. Journal of Health Economics, 56, 248-264.

高齢者の体重と身長の報告誤差が医療費の推定にどのように影響するかが分析されている。報告誤差を考慮することで、より正確な医療費用の推計が可能になる可能性が示されている。

 

 

Cawley, J., Maclean, J. C., Hammer, M., & Wintfeld, N. (2015). Reporting error in weight and its implications for bias in economic models. Economics & Human Biology, 19, 27-44.

体重の報告誤差が経済モデルに与える影響について調査されている。自己報告された体重データの誤りが経済分析にどのように影響するかを探るものであり、特にバイアスの問題に焦点を当てている。

 

 

Gil, J., & Mora, T. (2011). The determinants of misreporting weight and height: The role of social norms. Economics & Human Biology, 9, 78-91.

体重と身長の誤報告の決定要因として社会的規範がどのような役割を果たしているかが分析されている。社会的規範が個人の報告行動に与える影響が明らかにされ、報告行動に対する深い洞察が提供されている。

 

 

Davillas, A., & Jones, A. M. (2021). The implications of self-reported body weight and height for measurement error in BMI. Economics Letters, 209, 110101.

自己報告された体重と身長のデータがBMIの測定誤差にどのように影響するかが探られている。この研究は、BMIの測定における非古典的誤差の複雑な構造を明らかにしており、それがさらなる研究のための基盤を提供している。

 

 

Davillas, A., & Benzeval, M. (2022). The reliability of adult self-reported height: The role of interviewers. Economics Letters, 209, 110102.

成人による自己報告された身長の信頼性と、インタビュアーがそれにどのような影響を与えるかが議論されている。インタビュアーの役割が報告誤差に与える影響に焦点を当て、信頼性の向上につながる可能性が示唆されている。

 

 

Etilé, F., & Jones, A. M. (2016). You can be too thin (but not too tall): Social desirability bias in self-reports of weight and height. Economics and Human Biology, 23, 46-56.

体重と身長の自己報告における社会的望ましさのバイアスについて議論されている。この研究は、体重が平均よりも重い人々が、社会的な圧力により自分の体重を過小報告する傾向にあることを示しており、社会心理学的な要因が報告誤差に及ぼす影響を詳しく解析している。

 

Kim, T. H., & Han, E. (2017). Height premium for job performance. Economics & Human Biology, 26, 13-20.

この研究は、韓国の労働市場における身長と賃金の関係を調査している。1998年と2012年の韓国労働所得パネル調査データを使用し、月収と身長の関係を分析した。分析の結果、男性の場合、身長の賃金プレミアムは賃金の分布の上位四分位数で特に大きく、専門職や準専門職においてその傾向が顕著であった。また、女性の自営業者と男性の給与所得者においても90パーセンタイルでプレミアムが大きいことが示された。この研究は、身長と賃金の非線形関係を示し、職業や賃金水準による異質性が存在することを明らかにしている。

 

 

O’Neill, D., & Sweetman, O. (2013). The consequences of measurement error when estimating the impact of obesity on income. IZA Journal of Labor Economics, 2, 3.

この研究は、BMIの自己申告値を使用して肥満が収入に与える影響を推定する際の測定誤差の影響を調査している。アイルランドと米国のデータを使用し、自己申告されたBMIは実際のBMIよりも低く報告される傾向があり、この測定誤差は古典的な測定誤差とは異なることを明らかにした。この誤差は、最小二乗推定量がBMIと収入の関係を過大評価する原因となる。条件付き期待値推定法や操作変数アプローチではこのバイアスを十分に解決できないことを示し、非古典的な測定誤差に直面した場合に考慮すべき代替アプローチを簡単に議論している。

 

 

 

Kim, D., & Ruhm, C. J. (2014). The impact of obesity on consumer bankruptcy. Economics & Human Biology, 14, 201-213.

この研究は、肥満が消費者の破産に与える影響を調査している。分析の結果、肥満が破産リスクを増加させる可能性があることが示された。肥満による健康問題が医療費を増加させ、その結果、財政的困難を引き起こすことが一因と考えられる。この研究は、肥満が個人の経済的安定性に与える影響についての理解を深めるものであり、健康政策や経済政策の策定に重要な示唆を与える。

経済セミナー編集部 (編集)
出版社:日本評論社、出典;出版社HP