Brad Chattergoon: The Barriers to Entry to the Economics Profession(経済学界への参入障壁)ピックアップ記事となります。
https://medium.com/the-renaissance-economist/the-barriers-to-entry-to-the-economics-profession-afb9268014cd
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経済学のPhDプログラム、とりわけMITやハーバードといったトップスクールへの入学が非常に競争的であることを述べている。これらの学校の合格率は約5%であり、さらにコロンビアビジネススクールのようなビジネススクールの経済学PhDプログラムでは、合格率が推定2.6%と、さらに低い。優れた応募者は多いものの、利用できる枠は非常に限られている。
このような厳しい競争環境の中で、入学審査委員会は、インパクトのある研究を行う潜在力や、既存の研究分野を新たな方向に発展させる能力、さらにはプログラムを完了する能力を持つ応募者を求めている。プログラムごとに求められる要素は異なるかもしれないが、特に経済学においては、卒業後の学術的な配置（アカデミック・プレースメント）が主要な選考基準であり、これによって学部のランキングを維持または向上させることが重視されている。
経済学の分野では、トップスクールが圧倒的な影響力を持っており、American Economic Association（AEA）の執行委員会にも、これらのトップスクールが大部分を占めている。これは、経済学の分野が非常に「トップヘビー」（トップスクールに影響力が集中している）な構造を持っていることを示している。このため、エリート校からの卒業生が学界で大きな優位性を持ち、経済学の未来を方向づける立場に立ちやすくなっている。
さらに、経済学分野でのキャリア成功には、トップ5の経済学ジャーナル（AER、ECMA、JPE、QJE、ReStud）への論文掲載が極めて重要であり、これらのジャーナルでの発表と終身在職権（テニュア）の取得との間には強い相関がある。このため、トップジャーナルへの投稿実績が学界でのキャリア進展に非常に大きな影響を与えている。
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給与:給与は明確な価値であり、大学のランクによって准教授の給与は大きく異なる。Tier 1–2とTier 3–4の給与差は約20,000ドル、さらにTier 4とTier 5の間には25,000ドルの差がある。
授業負担:学者にとって授業負担はキャリアの進展に影響を与える重要な要素であり、高ランクの学校では授業負担が軽く、研究により多くの時間を割くことができる。一方、低ランクの学校では授業負担が重くなり、キャリアの進展が困難になる可能性が高い。
学術配置:PhDプログラムの学生は、卒業後の配置先が自分の出身校のランクと同等かそれ以下になる傾向がある。トップ8の学部は、主にトップ5のPhD取得者で構成されており、これが学術界での配置に大きな影響を与えている。
PhDプログラムは、配置を最大化するために選考基準を最適化している可能性が高く、応募者はトップ配置を価値とするため、配置を提供できるプログラムが良い学生を引き寄せると結論づけられている。
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PhD応募市場における競争
PhDプログラムの応募市場において、成功するためには主に2つの要件を満たす必要がある。
- 資格試験に合格すること
これは、全てのPhDプログラムにおいて基本的なステップとなっており、必須とされている。 - 学術就職市場で価値があるとされる研究および就職市場論文を作成すること
最終的な配置を最大化するために、入学審査委員会は応募者の研究能力や就職市場論文を重視して選考を行う。
これらの選考基準は、経済学分野において特に重視されており、学術的配置を最適化するために設けられている。また、応募者が既存の研究分野にどのように新しい方向性をもたらすかも評価の要素となっている。
経済学PhDプログラムへの参入障壁
参入障壁は主に以下の2つの側面に分かれる。
- 効果的に競争する能力の欠如や不公平な競争優位
応募者が十分な情報や機会にアクセスできない状況が含まれる。Ernesto Dal Bóらによる「Political Dynasties」という研究では、経済学者の世襲性が高いことが示されており、高学歴の親を持つことが学術的成功への重要な要素となっている。 - 金銭的な障壁
PhDプログラムの出願料やプレドクトラルフェローシップの低い給与が、金銭的な障壁となっている。PhDプログラムは通常資金提供されるが、スティペンドは大学やプログラムによって大きく異なり、生活費を十分にカバーできない場合もある。プレドクトラルフェローシップの給与も低く、経済的支えがない応募者にはさらに厳しい状況となる。
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PhDプログラムに関する資金提供の話題は、学問の世界が自己存続を目指していることに関連する。MDやJDなどの学位プログラムとは異なり、PhDプログラムには資金が提供されているのは、学術界が優れた学生を引き付けるために、その財政的な負担を軽減する必要があるからだ。特に学術ポジションの給与が他の業界に比べて低い場合、その差を埋めるために資金提供が重要となる。
ハーバードビジネススクール（HBS）とボストン大学（BU）のPhDスティペンドを比較すると、HBSでは年間43,860ドル、BUでは23,922ドルが支給されている。しかし、MITの生活賃金計算によると、ボストン-ケンブリッジ-ニュートン地区で単身者が必要とする生活賃金は年間34,824ドルであるため、これを下回るBUのスティペンドでは、学生は追加の借金を負う可能性が高い。
プレドクトラルフェローシップもわずかに給与が良いが、生活費や出願料、さらには学部や修士課程のローンも考慮すると、2年間のプレドクトラルフェローシップとその後の5年間のPhDプログラムを現実的に選択できるのは、経済的な支援を受けられる応募者に限られる可能性が高い。これは多くの優れた学生がこの道を選べない一因となりうる。
また、スタタ（Stata）の使用もエントリー障壁の一つとなっている。経済学ではスタタが事実上の標準言語となっており、他の分野で訓練を受けた学生がそのスキルを活かす機会を制限している。このため、プレドクトラルフェローシップやPhDプログラムの応募において、スタタのスキルがない応募者は不利になる可能性がある。
競争が激化しているPhD応募市場において、出願料や生活費などの財政的な負担は、多くの学生にとって参入障壁となっている。特に家族の財政的支援を受けられる学生が有利になる傾向が強まっており、このシステムは、ある程度の経済的余裕がある人々を選別するように設計されているという見解もある。