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数理統計学(Mathematical Statistics)と統計学(Statistics)は密接に関連していますが、焦点とアプローチにおいて異なる点があります。
数理統計学(Mathematical Statistics)
数理統計学は、統計学の中の一分野で、確率論に基づいて統計的な方法や理論を厳密に研究します。この分野は、主に以下のような特徴を持っています。
- 理論的アプローチ: 統計的推測や検定方法などの理論を確率論や数学的な証明を通じて厳密に分析し、理解を深めます。
- モデルの構築と分析: 確率モデルや統計モデルを数学的に定義し、それらの性質を探求します。
- 抽象的な概念: 確率変数、期待値、分散、共分散などの概念を用いて、データの背後にある確率的な構造を解析します。
統計学(Statistics)
統計学は、データの収集、分析、解釈、表示を扱う科学であり、以下のような特徴があります:
- 実践的アプローチ: 現実の問題を解決するためにデータを収集し、整理、分析し、結果を解釈します。
- 応用重視: 医学、経済学、心理学、社会科学など、多岐にわたる分野でのデータ解析に応用されます。
- 方法論の多様性: 記述統計、推測統計、探索的データ分析など、様々な手法や技術を使用します。
関係と違い
数理統計学は統計学の理論的基盤を提供し、統計学はそれを現実のデータに応用する形で関係しています。つまり、数理統計学は統計学の理論的な側面に重点を置き、統計学はそれを実世界の問題解決に応用するのです。両者は相互に補完関係にあり、統計学の問題解決には数理統計学の理論が不可欠であり、逆に数理統計学の理論も現実のデータを通じて検証され、発展していくと言えます。
数理統計学の歴史
初期の発展
- 17世紀
- 統計学の初期は、ギャンブルや生命保険の問題を通じて確率論が発展しました。ブレーズ・パスカルやピエール・ド・フェルマーなどの数学者がこの時代に活躍しました。
- 18世紀
- カール・フリードリヒ・ガウスやピエール=シモン・ラプラスなどが中心となり、最小二乗法や中心極限定理など、統計学の基礎となる概念が導入されました。
統計学の形成
- 19世紀
- 統計学は自然科学だけでなく、社会科学の分野にも応用され始めました。フランシス・ゴルトンは回帰分析と相関の概念を導入しました。
- カール・ピアソンは確率分布、モーメント、カイ二乗検定など、多くの統計的手法を開発しました。
数理統計学の確立
- 20世紀初頭
- ロナルド・エイモリー・フィッシャーが登場し、統計学は大きく前進しました。フィッシャーは実験計画法、最尤推定法、分散分析(ANOVA)、フィッシャーの正確検定など、数多くの革新的な統計手法を導入しました。
- ジェローム・コーンフィールドとアブラハム・ワルドは、推測統計学と意思決定理論の発展に寄与しました。
- 20世紀中盤以降
- 計算機の発展により、複雑な統計的手法が実用化されました。ジャック・カルマンのカルマンフィルターなど、動的システムの解析に革新をもたらす手法が開発されました。
- ブラッドリー・エフロンによるブートストラップ法など、統計的手法の計算と実装における新しいアプローチが導入されました。
数理統計学の歴史は、理論の発展だけでなく、コンピュータの進化とともに、実際のデータ分析の方法論や計算手法の進化も含んでいます。現代では、機械学習やデータサイエンスといった新しい領域との関連も深まっており、引き続き進化し続けています。